おまけ

「美月さん、がんばるわねえ」

 歩行訓練をしていると、療法士さんが話しかけてきた。髪を短くした美月の足は、まだ歩けるまでに時間がかかる。お医者さんは人間は不思議なもので、損傷したところを他が補うんだと教えてくれた。

「せっかく弟に救ってもらえたんですから」

「弟さん、意識はまだなの?」

 相手は「ごめんなさい」という顔をした。しかし美月は気にならなかったら。話してくれるのがいい。

「いいんです。せっかく生きてるのに、忘れられたら嫌でしょ?」

「そうなんだけど。真ん中の弟さんまでいなくなったんでしょ?」

「あの子もね。拓也もどこにいるんだか」

 美月は拓也は都会へ出て暮らしていると信じていた。本人が納得いくまでやれば、連絡してくれる。

「この命はマコトが救ってくれたんですよ。あの空の下、わたしがマコトを放さなければ救えたかも」

「何のこと?」

「何でもありません」

 慌てて笑った。

 夢なのかもしれない。たくさんの星が流れる中、美月はマコトの手をつかんだ。しかしマコトは鎖でつながれていて、地上では炎の髪をした赤い一つ目のバケモノが、マコトを引き寄せていた。槍を投げつけてきて、とっさに離してしまった。

「意外に拓也が見つけてくるかもしれません。もう一度わたしにもチャンスがあるなら」

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Through the world(トンネルを抜ければ) henopon @henopon

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