第16話「間話・少年教師ルネス」

 二時限目の休み時間。


 ルネスが参加した剣の授業の参加者のところへ、同じクラスの他の授業をとった女子たちが集まる。


「ねえねえ、うわさの少年教師の授業ってどうだった?」


「かわいかった?」


 能力を気にする子もいれば、他の部分が気になる軽薄な子もいた。

 学園生の全員が常に真面目でストイックなわけじゃない。


「えー、すごかったよ。剣の持ち方、振り方、かまえ、重心移動とかどんどんなおされてさ。みんな上達してた」


「ほんと。ひと目見ただけでどうなおせばいいかわかるってやばくない?」


「わたしたちが学んでる剣の流派ってバラバラなのにねー」


 と生徒たちはさっきの授業をふり返りながら答える。


「えっ? バラバラの流派なのに、全部教えられるの!?」


「魔法で言うと得意属性や系統が全然違うようなものでしょ? そんなことできる人なんているの!?」


 クラス内で一気に驚きが広がった。

 ルネスのことをかわいい男子としか思ってなかった生徒も例外じゃない。


「ほんとだよ。我流の子もいたから、最低でも四パターンはわかるんじゃないかな?」


 とひとりが予想を言う。


 この大陸の剣術は二大流派と呼ばれる「絶妙剣」と「夢想剣」、それに続く「独妙剣」が人気だが、全員が学んでいるわけじゃない。


「そんな実力者ってことは、凄腕の剣士なのかな? その割にルネスって名前は聞いたことがないけど」


 ひとりの女子がふしぎそうに首をかしげる。


「ルネス先生、本職は剣士じゃないって言ってたみたいだよ」


 と別のひとりが衝撃的な発言を放つ。


「えええ? ルネス先生っていったい何者なの……?」


「外見年齢と中身は一致してないかも。この学園で教師できるくらいだし」


 さらなる驚きとショックが生徒たちの間で広がる。

 うちひとりが正解を言い当てたのだが、誰も夢にも思わなかった。


「今年の新入生たちって、特にやばい四人がいるってウワサあるでしょ?」


 とひとりがある話題を持ち出す。

 

「ああ、四英華(クアトールフロースだっけ」


 という言葉で少女たちはひとつ下の学年のうわさを思い出す。

 

 新入生代表を務めたのはすでに聖女の称号を得ているドルシラ。


 そして宮廷魔導士並みの魔力許容量を誇り、四節呪文で絶縁金属を破壊したサビーナ。


 クラリス教官を負かしたローズ、あり得ない錬成技術を持つアガタ。

 この四人はすでに上級生を凌駕する実力を持つという話である。


 あまりにもやばすぎる情報はすでに全校生徒に知れ渡っていた。


「ルネス先生とその四人は同郷で、ルネス先生に教えてもらってたんだって」


「えええ!? そんなことってあり得るの!?」


 情報源となっている女子の言葉にみんなが驚愕する。


「何でもその四人が自分よりルネス先生のほうがずっとすごいって言ってたみたい」


「ルネス先生のほうはなんて言ってるの?」


「さあ? そこまでは……」


 情報源となっていた女子はそこで言いよどむ。

 彼女は剣の授業をとっておらず、ルネスと本格的に接触したことがない。


 さすがに仕入れる情報に限度があったようだ。


「ルネス先生が教える授業、そのうち来るからそのときでもいいかな」


 と彼女が言うと、


「ええー? もっと早く知りたいよぉ」


 不満とまではいかなくても、残念そうな声があちこちからあがる。

 ルネスはすっかり女子生徒たちの間で時の人となっていた。

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英雄女学園の伝説教師~教え子たちが俺を崇拝し甘やかす最強最狂集団になった~ 相野仁 @AINO-JIN

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