虚空の塔の織り女

日八日夜八夜

虚空の塔の織り女

とんからり ぐしゃぐしゃの羽根を織る

現実を解きほぐして もう一度空にかえろうとして


泥に洗われ 涙でよれよれ 失望色に染められて

血を流す運命から糸を引きずり出して


とんからり

意味のある絵図を

せめて希望の匂いのする混沌を


つながらない つながらない

模様も絵柄も何一つ描き出せない

足を全てもがれた蜘蛛のよう 自分の糸に絡まって

たった一つのパターンすら成せずじたばたもがく


織る。

ぼろぼろの魂が吐いた細い吐息と目眩

りあわせて 見えない糸をとんからり


織る。

声を喪った歌のように、歪に空虚をとんからり


糸車は壊れ、はたは朽ちる

裸の死骸が帷子かたびらを待っている

どこかの王さまのようにだまされてくれない

わたしがわたしに信頼を預けてくれないから


見えない声を織り続け 一つの王国を作り上げても

信じることが出来なければ 見えない糸くずの山


きらびやかで幸福な王国の夢はお星さまのよう

何回信じようとしても辿り着けない

光を手ですくえっこないように


どこかに上手なやり方が隠してあるのだろうか


糸くずに埋もれて眠るくたびれた織り手

何もかもくたびれほつれ 誰も上手につくろえない

世知辛い風に吹かれた糸くずは転がり絡まり

羊になって夜に逃げて行った




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虚空の塔の織り女 日八日夜八夜 @_user

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