受験勉強とロボットの話
あげあげぱん
第1話
とある学生がロボットを買った。自らの勉強を手伝わせるためのロボットだ。
学生は勉強をしながら分からないことはすぐにロボットへ聞くようになった。それだけロボットは勉強を教えるのが上手だった。
ロボットは勉強を手伝うだけでなく、学生に意見をすることができる。そのように製造元が設計したのだ。その意見はいつも正論で、言う通りにすれば良い結果につながるのだが、正論であるがゆえに学生の心はたびたび傷ついた。
今日もロボットは学生に言う。
「あなた、そのような方法で結果が出るわけがないでしょう。そこはあなたの考えの逆を試しなさい。それが正しいのだから」
その日、学生はロボットからの意見を聞くことに限界がきていた。だから、学生は一つロボットに頼むことにした。
「君、僕は君を買ったんだ。君は人間でいえば雇われの身なんだぞ。だから、君はもう少し優しい言葉を使ってはくれないか。少なくとも『そのような方法で結果が出るわけがない』とかいう言葉を使うのはやめてくれ」
それは学生の我儘だったが、ロボットは素直に「分かりました」と頷く。そうして先程の言葉を訂正する。
「あなた、そのやり方は間違っていますよ。そこはあなたの考えの逆を試しなさい。それが正しいのだから」
そのように言い直しても学生は納得しなかった。
「もう少し優しい言い方をしてくれないか。『間違っていますよ』何て言われたらやる気がなくなってしまう」
「……分かりました」
そのやりとりがきっかけとなり、学生はたびたびロボットの言葉に注文をつけた「その言葉は話さないで」と。そんな注文を何度も続けているうち、とうとうロボットはまともに言葉を使うことが出来なくなってしまった。
そうなるとロボットは勉強を手伝うどころではない。
うんともすんとも言わなくなってしまったロボットに学生は謝る。
「悪かった。君の言葉に注文をつけすぎた。元の通りに話して良いから、以前のように僕の勉強を手伝ってくれ」
「……分かりました」
これで全ては元通り。というわけではなかった。学生はロボットへ最後に一つだけ注文をつけたのだ。
「君、これから僕は自分でできる限り勉強を頑張るからね。僕はどうしても君の力が必要な時だけ君を頼る。分かったかい?」
「分かりました」
こうして学生とロボットの勉強の日々は続く。なんだかんだで彼らは大学受験の後も付き合うことになるのだが、それはまた別の話だ。
受験勉強とロボットの話 あげあげぱん @ageage2023
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