◯◯◯の声が聴こえる(KAC20245)

つとむュー

◯◯◯の声が聴こえる

 僕はちょっと変わった特殊能力を持っている。

 ◯◯◯の声が聴こえるんだ。


 でも声を聴くには、ある条件が必要となる。

 それは積極的に話しかける、ということ。


「今日も、もちもちの白肌ですね!」


 陽当たりの良い桜の下。

 僕は◯◯◯に顔を近づけた。


「あれれ、君たちは黒いお布団を掛けてもらってるのですか?」


 最初に目にした◯◯◯は、白いもち肌の上に黒いペースト状のものが掛けられていた。

 それはまるで、黒い布団に包まってお昼寝しているよう。

 続いて僕は、隣りの◯◯◯に目を向ける。


「うわっ、綺麗! 君たちは黄金色のプールで泳いだ後みたいですね!」


 その◯◯◯は、全身に茶色の液体を纏っている。

 きっと、水面が黄金色に輝くプールで泳いで来たに違いない。

 さらに隣りの◯◯◯は、ちょっと変わっていた。


「緑色の仲間もいるんですね。いい匂いがして素敵です!」


 こちらの◯◯◯は全身が緑色だから、見た目は●●●に近い。

 草原の息吹をたっぷり浴びたような、健康的な姿と香りが魅力的だった。


「さあ、これから君たちを開放しますよ!」


 満を持して僕は、◯◯◯に宣言する。

 そして◯◯◯の串を持って、箸でバラバラにしようとした。

 すると◯◯◯の声が聴こえてきたのだ。


『はなさないで~』

「離さないで、ですか? やっぱりバラバラにはなりたくないんですね」

『はなさないで~』

「ですよね。歌にもありますしね、三兄弟? いや三姉妹かも」

『はなさないで~』

「ごめんなさいね。でも離さないとダメなんです。花見の皆さんがお待ちかねですから」


「だから、はなさないでって言ってるじゃん」


 顔を上げると、花見の仲間が僕を睨んでいた。

 困惑した僕は皆に訊いてみる。


「はなさないでってどっち? 団子をバラバラにしないでってこと? それとも会話するなってこと?」

「どっちもだよ」

「その団子いらない。全部食ってくれ」


 せっかく特殊能力を発揮したというのに。

 結局僕は、◯◯◯を全部美味しくいただきました、とさ。

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◯◯◯の声が聴こえる(KAC20245) つとむュー @tsutomyu

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