第10話 DADA
別に意地になってインストゥルメンタルのグループを選んでいるわけではないですが、今回の『DADA』もまたシンセ主体のインストグループです。このグループもまた、たかみひろしさんのお気に入りだったりしますので。
『DADA』の結成は1977年頃と言われています。後に『ノヴェラ』に参加する平山照継さん、『ケネディー』に参加する安田隆さんが所属していた『飢餓同盟』のメンバーである小西健司さんと、後に"手数王"と称されるドラマーの菅沼孝三さんも所属していた『カリスマ』のメンバーだった泉陸奥彦さんによって結成されています。
最初のアルバムは、当時『ロックマガジン』という雑誌を主宰していた阿木譲さんのレーベルであるヴァニティー・レコードより限定で発売された『浄』です。
このアルバムは、ヴァニティーレコードの第1弾として発売されたもので、日本の絵巻物である『餓鬼草紙』からインスパイアされたものです。コンセプトの指示は阿木さんによるもののようで、シンセサイザーを使用していますが、後の小西さんのインタビューによると、まだシンセを購入したばかりで扱いに慣れてなく、更に予算の関係で制作時間が極端に少なく、音質もイマイチで納得出来ない部分もあったのだと。
その為、後の作品と比べると、かなり色が違う感じです。テーマがテーマだけに、かなり暗い感じの音ですが、時々は聴きたくなるような不思議な感じのアルバムです。当時は500枚程度しか作成されなくて、しかもすぐに完売したため、CD化される前までは数万円のプレミアが付いていたそうです。
アルバムのクレジットの記載の最後の方に『dedicated Eno』と記されています。これは当時、阿木さんが注目していた元『ロキシーミュージック』のブライアン・イーノの事ですね。ブライアン・イーノのObscure Recordsの10枚組シリーズに対する阿木さんからの返答が『浄』なのだと。日本の生死に関わる事を物語的に連続リリースしたかったようですが、それは実現しませんでした。
『浄』の1曲目の『遊宴。妊楽。餓鬼』を聴いてみると、ブライアン・イーノというよりもドイツのグループである『ポポル・ヴー』のような現代音楽の影響を感じさせますが、自分としては、初期のタンジェリン・ドリームを感じさせるものがありますね。勿論、『浄』の方は日本的なイメージを感じさせる部分がありますが。
https://www.youtube.com/watch?v=5_CCgmvMULY
『DADA』は、ライブ活動も精力的に行っており(当時の『天地創造』とも行動を共にする事もありました)またシンセサイザーのオムニバスアルバムにも参加したりしています。そして『アインソフ』、『ノヴェラ』と並んで、ネクサスレーベルの最初の契約バンドに選ばれます。ギターとシンセサイザーのマニア受けするようなサウンドなので、たかみさんによれば、レコードを出せるかは、少々厳しいと思われたのですが、『ノヴェラ』が予想以上にウケたので、あっさりと発売に持っていけれたのだとか。そんな中で発売されたアルバムが『DADA』です。
正直、自分にとっては、如何にもデジタルっぽいシンセサイザーの音よりも、ハモンドオルガンやパイプオルガン、そしてメロトロンの音色が好きですので、『DADA』のイメージ的には敬遠していたんですね。CDが発売されても食指が伸びなかったというか。しかしながらYoutube等でも聴けるようになってからじっくりと聴いてみたのですが、確かにデジタルっぽさはあるけれど、アイデア的には悪くないし、今まで敬遠していたのが勿体なかったなと感じたくらいでした。先入観だけで判断するのは良くないですね。意外とシンフォニックな感じもする曲もあったりするのも良かったりします。しかしながら、やはりインストものは売れにくいんですね。キングの営業の人が渋っていたのも仕方ないのかもしれません。日本の『ヴァンゲリス』という声もあったようですけれど。発売から40年以上経ちますが、冷静な目で見てもらって評価してもらいたいような、そんなアルバムです。個人的には、3曲目の『America』という曲が好きですね。
https://www.youtube.com/watch?v=5v83Zs3lj_8&t=1053s
残念ながら、二人の音楽性の相違から『DADA』はその後、解散してしまいます。小西さんは、『4D』というポップユニットを、泉さんは後に『ケネディー』というグループを結成することになります。『ケネディー』に関しては、後日、紹介するつもりです。
『DADA』に関しては、『浄』発売以後のマテリアルもマーキーのベルアンティークレーベルから発売されていますが、後に発売された改訂版と言えるものとジャケットが同じだったりするのでややこしいです。改訂版は、ライブ会場で限定発売されたテープが元となっていたりします。
こちらは、1994年発売の『城壁~スペシャルイシューVol.1』から。
https://www.youtube.com/watch?v=30qT5WMAdcs
そして改訂版から『鏡の中の家』。この曲は、小西さんがマイク・オールドフィールドの『オマドーン』というアルバムに影響を受けて作ったと言われています。
https://www.youtube.com/watch?v=4AIwRbLdOTw&t=17s
『城壁』も『鏡の中の家』も大曲ですのでキングからのアルバムには収録されていませんが、個人的には、どちらかをメインにしてアルバムを作った方が良かったんじゃないかと思っています。
そして泉さんに関してですが、『ケネディー』解散後は、いくつかのグループの参加を経て、80年代末からは、ルーズベルト泉の名でコナミのサウンドチーム 矩形波倶楽部の一員として活動、主にアーケードゲームの音楽を担当したのだとか。
特に有名なのは、『ギターフリークス』と『ドラムマニア』関連ですね。この辺りは詳しくないので、『ピクシブ大百科事典』の該当ページを貼っておきます。(手抜き)
https://dic.pixiv.net/a/MODELDD%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA
『MODEL DD8』という曲がライブイベントで演奏された事がありますが、これをライブで再現するのかと映像を見て愕然としました。因みにこの時のメンバーは、
泉陸奥彦さん(g)、白船睦洋さん(b)、 佐藤和豊さん(key)、菅沼孝三さん(dr)ですね。画質が悪いのが残念です。
https://www.youtube.com/watch?v=q_cXbkeO7uI
泉さんは、2006年にはコナミスタイル限定発売で『Heaven Inside』というソロアルバムを発売しています。これは存在自体、知らなかったのですが、"9.11"にショックを受けて制作したというタイトル曲の『Heaven Inside』が心を撃つような曲でした。プログレハードの名曲と言っていいんじゃないかと。もっと早く聴きたかったなぁ。
https://www.youtube.com/watch?v=zrfunkE0VM8
また元『メガデス』のマーティ・フリードマンも2曲ほどゲスト参加しています。どういう経緯で参加したのかは知りませんが。
https://www.youtube.com/watch?v=sagXeSya5OQ
アルバムが欲しくなってきましたが、現在は扱っていないようです。中古をこまめに探すしかないかな。
○○○○
次回は日本のプログレ史上、最重要グループの一つである『ノヴェラ』について書くつもりですが、出来る限り色々な情報を入れたいと思いますので、調べるのに時間がかかりそうです。多分、忘れたような頃にアップされると思います。まぁ待っているような人はいないと思いますが。
鬼~日本のプログレッシブロック風雲録~ 榊琉那@The Last One @4574
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