【KAC20247】 好きな色

小烏 つむぎ

【KAC20247】 好きな色

『何色が好きですか』


 うーん、とスマホの画面から目を離した美鳥は、座っていたベッドにバタンと背中を預けた。ここはたぶん薔薇色とか桃色とか桜色とか可愛い系の色を選ぶのが正解なんだろうなぁ。


 美鳥はスマホでみつけた「貴女と相性のいい王子様を探そう」というサイトで質問に答えている最中であった。


 「ホントはさぁ、翡翠色とかあお色とか、あっち系が好きなんだよね」


 美鳥はぶつぶつ呟きながら、先ほどから美鳥の膝のうえで寛いでいる愛猫マロンの背中を撫でた。


 「ねぇ、マロォー。いっそ、赤?

情熱とヤル気の赤色ってありかなぁ」 


 美鳥に背中から腰を撫でられて、マロンはしっぽをくるんと回した。


 「マロンのハチワレの色でいく?黒色とかさ。ちょっと茶色がかった黒、どうよ?」

「この靴下の白色もいいよね。」

マロンの靴下をはいたような白い足を持ち上げながら、美鳥の思考が少しづつズレていった。


「マロン、瞳の色もキレイよ。緑色がかった金色。」

「うーん、この毛皮の手触りサイコー!」

「マロォーン! この肉球、たまらん。ほんのりキャラメル臭!」


 ◇ ◇ ◇


 マロンは後ろ足を持ち上げられ肉球をクンクンと匂われて、ため息をひとつついた。これでいくと腹を吸われる流れだろうなと思った。


 下僕みどりは何かに行き詰るとよくマロンのお腹に鼻をつけてくるのだ。下僕みどりの力になるのも主人ねこの役目。マロンはそっと体の力を抜いた。


 ◇ ◇ ◇


 美鳥はマロンをベッドにコロンと転がすともふもふのマロンのお腹に顔を寄せた。


「ねえ、マロン。何色が好き?」

「わたし、ピンク色って苦手なんだよね。

ココはヤル気ありげに赤でイクべきかな? ねえ、マロン、赤好き?」

「うーん、ヨシ! 赤でいってみる!」


 マロンのお腹吸いつつ一人喋っていた美鳥は、急に起き上がると再びスマホに向かった。

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 マロンは起き上がると、下僕みどりに吸われてけば立ったお腹をぺろぺろと舐めて整えた。


『赤って言われても、猫に赤色は見えないんだけどね』

『でも黄色と青色は見えるからね、アンタの好きなあおはわかるのよ』


 マロンはベットに腰かけてスマホになにか打ち込んでいる下僕みどりのそばに座り直すと、下僕みどりの膝に頭を乗せて目を閉じた。


 マロンの長いしっぽが美鳥の背中にポンと軽く触れた。



****************************


進藤 進様が美鳥とマロンのイラストを描いてくださいました!


進藤 進様近況ノートより

https://kakuyomu.jp/users/0035toto/news/16818093074234852637#comment-16818093074237596845

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