第2話 韓国風イケメンに話を聞いてもらう

「俺もその気持ち、少し……わかります」

「えっ……」


 韓国風イケメンがそう言うと、キレイ並んだまつ毛を悲しそうに伏せた。


「俺も、実家で柴犬を飼ってて。タロって言うんですが、そいつが咥えたおもちゃを引っ張って庭で遊んでたんです。でも、母が帰ってきた途端に、タロはおもちゃを放り出して母の方に行っちゃって。。」

「タロ……」


 私は何とも言えない気持ちになった。タロ……


 韓国風イケメンはお酒を少量、口に運ぶと、また話を続けた。


「その時の気持ちは何となく……悲しくて、辛くて、切なくて。。貴女はどんな気持ちでしょうか?」


 韓国風イケメンはそう言うと、真摯な表情で私に問いかけた。


「私の気持ち……」


 私は……つらかった。悲しかった。胸が締め付けられるように苦しくて……そう、悔しかったのだ。


 その思いを伝えると、韓国風イケメンはしっかりと頷いた。


「どんな感情も、受け止めてあげてください。その気持ちはきっと、自分だけの大切な気持ちなのだから」


 大切な気持ち……確かに、この気持ちは、今この瞬間しか味わえないのかもしれない。


 感情とは一時的なものだ。その時、その時で新しい感情が生まれる。今はその一つ、失恋の気持ちに浸れる貴重な時間である。大切にしよう。。


「ありがとう。少し、気持ちが楽になったわ。帰ってから、この気持ちに浸ってみるね」


 私は酔った勢いで、韓国風イケメンの頭を撫でると、マスターに会計をしてもらってその場を去った。


 韓国風イケメンは眩しそうに目を細め、こちらに手を振っていた。

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