失恋したと思ったら。〜昼はカフェで働く地味系日本男子、夜は飲み屋で出会う韓国風イケメン〜

こと。

第1話

「ぐわあ……」


 私は都築佐久。29歳、オフィスワークをしている。通称OLである。


 皆さんは疑問に思っただろう。ゾンビのような呻き声が聞こえる、と。もちろん私の声だ。


「マスター、もう一杯!」

「さっちゃん、そのくらいにしときな」


 バーのマスターにお酒のお代わりを頼むと、マスターは眉を下げて、諭すように私にそう言った。


 何故こんなに酔っ払っているかと言うと……


 職場の同僚でずっと気になっている男性がいた。茶髪の癖っ毛が可愛くて、明るくて、「柄じゃないですが……」と言って、よくお菓子を分けてくれる男性だった。しかし今日、その人が後輩の女性と、カフェでデートしている所を見てしまったのだ。


 失恋だった。


「……つらい」

「さっちゃん、大丈夫かい?」


 私は心配そうなマスターを急かしてお酒を強奪すると、伝う涙をそのままに、ぐいっと一気に流し込んだ。


「もうダメだ……」

「どうかされましたか?」


 私が酔っ払ってフラフラになっていると、カウンターの隣に座る韓国風イケメンが、そっと、私の肩を支えてくれた。


「(うわっ! すごいイケメン)」


 距離が近くなり、韓国風イケメンの顔がよく見えた。うりざね顔に自然なメイクがのってて、一重で切れ長の目尻が少し赤くて、肌がキレイで、鼻が柔らかな曲線を描いてて、あごがシュッとしてて……


「……!(いけない、質問に答えないと!)」


 見惚れて無言になってしまった自分に気づき、慌てて韓国風イケメンに返事をした。


「ごほん、すみません。……色々あったんです。失恋はつらいのよ……」


 多分年下(20代前半)だと思われる韓国風イケメンに、思わず語るようにタメ口をきいてしまった。


「よかったら、話を聞きますよ」


 優しげに微笑む韓国風イケメンを見ていたら、気づけば失恋について全て話していた。


「そんなことがあったんですね」

「うう……」


 韓国風イケメンは全てを聞き終えると、涙を溢す私の頭を撫でてくれた。イケメン過ぎだった。鼻血が出そう。涙は一瞬で止まった。

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