告白
@aozora
第1話
絶体絶命の場面と言うものはそうそうある事ではない。
だが時にそれは突然やって来る。
高速道路での玉突き事故、吹き飛ばされる車体、普段からシートベルトをしてこなかった事を今日ほど後悔した事は無い。
助手席のドアが開きあわや車外に零れ落ちそうになる彼女の手を必死に掴むも、自身も引っ張られ偶々つかんだアシストグリップに全体重を預けた状態。
車体が横倒しになった今、鉄棒に片手でぶら下がっているのと何ら変わらない。
「健司、私。」
「恵、諦めるなよ、すぐに助けが来るからな。何時間掛かろうとも絶対にこの手は離さない。だからお前も諦めたりするんじゃないぞ。」
健司は恵に向かい強い言葉で呼び掛ける。それはこの状況に絶望し自ら死出の旅路を選びかねない彼女を鼓舞する言葉。
いや、それは彼が自身に言い聞かせる為の言葉であったのか。
「健司、ありがとう。でもこんな時だからこそあなたに聞いて貰いたい事があるの。」
「なんだよ改まって。いつも言ってるだろう?何でも俺に話せって。そんな弱弱しい声を出すな、どんと来いってんだ。」
健司は務めて明るい声を出そうとする。正直今は告白など聞いている余裕はないが、それで彼女の気が収まるのならと笑顔を作ろうとする。
「実は私、あなた以外の人とホテルに行っちゃったの。ううん、それだけじゃない、あなたがいない時にあの部屋で。」
“グッ、なぜこんな時にそんな話を。”
健司はショックで緩みそうになる手を必死に握り返す。
「そ、そんな事気にするな、恵みを満足させられなかった俺が悪いんだ。この場を乗り切ったら改めて告白させてもらう、そこからやり直そう。」
「ありがとう健司、大好き。それと健司のタンス預金を使っちゃったけど許してくれるよね、健司って優しいもん。後箱に仕舞ってあった変なお人形?メルカリでいい値段が付いたの。ラッキー。」
「お前あれは俺の大事な!あ。」
健司は思った、”こんなところで話さないでくれ”と。
告白 @aozora @aozora0433765378
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