新型テロリスト・ミラー五郎

狐付き

ミラー五郎の正体

「あなた、ミラー五郎の姿を見たそうじゃないか」

「……」

「おや、だんまりですか? いいですか、警察ですらその姿を見たことがない。その情報を隠蔽するということは、テロ幇助ということになるんですよ」


 警視正は、ある筋から新型テロリスト・ミラー五郎の姿を見たという男を見つけることに成功した。なにがなんでもこの男を吐かせないといけない。


「脅しには屈しないということですか? それはね、協力者のすることですよ」

「……」

 男は下を向いてぎゅっと拳を握る。抗うつもりらしい。


「確かにね、証拠がなければこんな脅しに意味はない。でもね、あなたがミラー五郎と接触している映像が残っているのですよ」

「!」

 男は顔を上げた。その表情には、焦り、焦燥、恐れ、恐怖などがうかがえた。


「……脅されているんです……」

 男はぽつりと話した。


「大丈夫。身柄は警察で保護します。あなたに危険は一切────」

「予告されていたのに、あなた方は今まで止められたことがあったのか!?」

 急所に近い部分への一撃だ。ダメージが大きい。それを言われてしまうと、警察も黙るしかない。


 新型テロリスト・ミラー五郎の手口は摩訶不思議としか言いようがない。

 今までのテロリストと異なり、毒や爆発物、細菌などを使わないことは助かるが、電車をバッファローで満載させたくらいはまだしも、パンダのキョンシーなんていうオカルトというよりもファンタジーに近いものまで用意してくる。まるで魔法使いだ。どう考えても現代科学で対抗できるものではない。


「国としてはテロリストに屈しないという理念があるだろうけど、国民には自分の身を守る権利がある。それでは失礼する」

「ま、待ってくれ!」

 去ろうとする男を警視正が引き止める。それでも、少しでも、なんでもいいから欠片でも情報が欲しいのだ。


「なにか?」

 警視正は言葉を選ぶ。どこまでがセーフでどこからがアウトなのか。

「どのような脅迫をされたかは答えても大丈夫かね」

「……恐らくは。そいつは自分に関わることを話したり伝えたりした場合……」

「場合?」

「全身を謎の寄生虫が這いずり回るだろうと」


 そんなことできるはずがない……とは言い切れないのがミラー五郎。

 警視正は悔しそうな顔で男を見送った。

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新型テロリスト・ミラー五郎 狐付き @kitsunetsuki

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