第8話 これから、これから……
ふと視線の先には、この数日間、僕のことを応援して、見守っていてくれたお店の皆様が暖かい眼差しを向けていてくれた。もちろん、一番お世話になった『プティカド・ボヌール』店主の栗栖さんこと、栗さんも。
――忙しい時期に、本当に申し訳なかったな。
(今度、何かお礼をしないと!)
「ねぇ、柊君! 食べてもいーい?」
エッヘヘヘ、と笑顔で言うりらは、とっても可愛くて愛おしかった。
「もちろんだよ! ぜひぜひ、食べてみて」
話が終わるのと同時に、栗さんは取り分けるお皿とカトラリーを持ってきてくれる。
「お客様、こちらは本日特別サービスのお菓子でございます。宜しければ」
少し笑いながら栗さんは、プチサイズのケーキを並べてくれた。
「えっ、いいんですか?!」
僕は驚き、でも嬉しくて、栗さんの顔を見つめる。
「若き二人へ。これからの幸せを願って」
栗さんは私からのプレゼントだと軽くウィンクして、ごゆっくり~と手を振ってくれた。
「「いっただーきます♪♪」」
それから僕たち二人はゆっくりと、美味しいスイーツを堪能した。
こうして、悩みに悩んだ僕のホワイトデーは、周りの人たちに助けられながら、何とか無事! 成功に終わったのだった。
◇
――『私に考えがあるのだけれど』
あの日、そう言って助けてくれた栗さん。見ず知らずの僕なんかに、どうしてそこまで親身になってくれたのか? 今の僕にはまだよく解らない。でも、余裕がなく視野が狭くなり、凝り固まっていた僕の考えを、一瞬にして変えてくれた栗さん!
「いいかい? 柊君。自分の考えや思いを達成することは大切で必要なことだ。しかし、上手くいかない時だってある。そういう時はね――」
栗さんのおかげで、あの日折れかけていた僕の心は立ち直り、そして今回の、ホワイトデー大作戦成功に繋がったのだった。
◇
――カラーンコローン♪
「いらっしゃいませ~」
まずは、ちゃんとお礼を言わなきゃと、僕は次の日すぐにお店へと出向いていた。
「こ、こんにちは! あの栗さんは……」
「やぁ、柊。いらっしゃい」
僕の声に、栗さんは奥から出てきてくれた。何日間もお世話になった師匠なのに! 今日はなんだか一段と緊張する。
「あの、とてもお忙しい中、十日間もご指導いただき、本当にお世話になりました!!」
今日は、お礼と感謝の気持ちを伝えたくて、と言うと栗さんはまた! 驚きの提案をしてくれるのだった。
「ご丁寧にありがとう、私も楽しく仕事をしたよ」
「いえ、ご迷惑ばかりお掛けして……」
「ところで柊、どうだ?」
「えっ? 何がですか?」
「――このまま、うちのお店で働いてみないか?」
(えっ、エッ、えぇぇーー!!)
「大学に行くんだったよな? もちろん、学校優先。だから空いた時間にアルバイトって感じだねー」
――な、ね、願ってもない話だ!
「栗さん! こんな夢のような話……ありがとうございます! 僕、頑張ります!!」
「よしっ! 決まりだ」
そう言って、優しく笑いかけてくれた。
◇
栗さんの言ってくれた言葉。「そういう時はね――」の続き。
『柔軟かつ発想の転換、そして全く違う方法も、時には必要さ』
これが――これまでと、これからの僕の人生を大きく変えてくれた言葉だった。
おわり♫
可愛いあの子に恋をして~ホワイトデーの約束~ 菜乃ひめ可 @nakatakana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます