ネットでも有名な東京・上野のお化け階段。「上りと下りで段差が違う」という怪しげな噂を聞いたことがある人も多いでしょう。私も噂を知って数えに行ったことがあります。その実態は、やはり噂に過ぎません。しかし本作は、その噂とはまた別の話。筆者様がお化け階段で体験した、不思議な少女との出会いの話。その出会いは、あの階段が「お化け階段」と呼ばれる所以は他にあるのではないか?と考えさせられる、とても不気味なものでした。
文京区が舞台だけに、茹だるような暑い夏の景色が脳裏に浮かぶ、純文学ぽくもあるホラーでした。〝辻〟はよく異界に繋がる場所として話に出てきますが、そう言われてみれば、学校の怪談や十三階段のように〝階段〟もまた幽世へのゲート……階段も〝坂〟の一種と見ることもできるが、坂もまた然り。 そんな舞台装置を上手く使われましたね。 夏に谷中へは幽霊画見に行ったりしますが、根津神社へも足を伸ばしてみたくなりました。
湯島聖堂、昌平坂学問所、帝国大学が置かれ、多くの文人たちが暮らした場所、東京都文京区。その一角にある「お化け怪談」の名を持つ階段道を通った主人公は、不思議な少女に、遊びに誘われる……。階段がしつらえられていますが、そこは言うなれば坂。坂は境(サカ)であり、異界との境界であると古くから言い伝えられています。恐ろしい運命に誘われないよう、ご用心を……。