星は導く

岸亜里沙

星は導く

「あなたにはきっと、明るく素晴らしい未来が待っています」


著名な占星術師、西園寺さいおんじ凛音りおんは告げた。


「本当ですか?」


相談者である佐藤さとう真理まりは破顔する。

家族の事、仕事の事、体調の事など、将来の不安から佐藤は、西園寺の元へ相談をしにやって来た。

芸能人などを顧客に持ち、驚愕の的中率を誇る占い師として脚光を浴びている西園寺に、自分の未来は明るいものだと告げられ、佐藤は心に溜め込んだ不安が、ふと軽くなった感じがし、知らず知らずほろりと涙がこぼれる。


「ありがとうございます。今日、ここへ来て良かったです」


佐藤は西園寺に礼を言い、その場を後にした。


それから数日後、仕事の準備をしていた西園寺の元へ、突然大柄な男が怒鳴りこんできた。


「なあ、西園寺ってのは、お前か?」


目を血走らせた大柄な男に怯むことなく、西園寺は冷静な口調で話す。


「はい。わたくしが西園寺でございます」


「俺は佐藤真理の夫だ。お前、妻になんて言ったか覚えてるか?」


佐藤の夫と名乗る男は、顔を真っ赤にしながら捲し立てる。


「佐藤真理さんですか?確か彼女には、未来は明るいものですとお伝えをしました」


西園寺が答えると、男は更に顔を真っ赤にしながら、大声を出す。


「昨日の晩、交通事故で死んだよ!お前に未来は明るいものだって言われ、喜んでいた矢先にな!高い占い料を取りやがって、お前、完全に詐欺じゃねえか!どう責任とってくれるんだ?」


西園寺は真っ赤になった男の顔を見ながら、静かに話しかける。


「亡くなられたんですか?」


「そうだよ!妻は死んだんだ。お前の占いなんて所詮インチキだ!俺はお前を訴えてやるからな!」


西園寺は、微笑みながら答える。


わたくしは佐藤真理さんの運勢を占いました。ですが、その占いは当たったようですね。星が導いた通り、彼女はもう何も不安を感じる事は無くなったのですから」





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星は導く 岸亜里沙 @kishiarisa

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