敏腕エージェントの日常4

信仙夜祭

今日は、お姫様の護衛か~

 俺こと敏腕エージェントは、今、心がささくれ立っていた。


『敏腕エージェント、仕事だ。我が国のお姫様が敵国に来賓として招かれる。ここで、万が一にも危害を加えられると、一気に戦争になってしまうかもしれない。そこで、君には極秘裏に護衛を行って欲しい。どうも過激派が、スナイパーを雇ったとか雇っていないとか情報があるのだ。頼む、戦争は誰もが望んでいないのだ』


「……なら来させるなよ!」


 俺は、暗号文をテーブルに叩きつけた。

 もうね、最近ね、エージェントの仕事じゃないよね。王族警護とか、警備兵にやらせろよ。

 エージェントが目立ってどうすんだよ。


 建築・輸入業者の社長になってから、もう一年になるんだぞ。

 その間に、平凡エージェントたちは、捕まっているし。彼等は、今元気だろうか……。


「人手が減っているから、こんな任務しか来ないのだろうか……。これが本当に母国の平和に繋がって行くのか、疑問しかないんだけど」





 お姫様が、来国された。

 オープンカーに乗ってパレードだ。敵国でも人気があるんだな。まあ、若くて美人だしね。アイドルかもしんない。


 地上は、警備兵で囲まれているので大丈夫だろう。

 今俺は、狙撃ポイントを周り、怪しい人物がいないか、探している。


「む?」


 何かが光った。そちらを見る。


(もしかして、スコープの反射鏡か?)


 数キロメートル先からの狙撃だった場合、防ぎようがないぞ?

 だがあの狙撃地点であれば、建物の隙間を縫うように撃たねばならない。

 パレードカーが狙撃地点に到達するまで、まだ間がある。


 俺は、建物の屋根を伝って、狙撃手がいるであろうポイントへ向かった。



「何者だ! 屋根伝いに走って来て、目立っていたぞ! つうか、警備兵を引き連れて来てんじゃねぇ!」


 狙撃手の元に辿り着いたら、突っ込みを入れられた。

 俺も全力疾走だったんだよ。

 だが、これで狙撃は防げた。ちょっと下が騒がしいが、後一分は余裕がある。

 それと、狙撃手はかなり大きなライフル銃を持っているので、こいつは下の連中が逮捕してくれるだろう。

 俺は、無言でその場を立ち去った。こんな時に、ワイヤーアクションでの移動は基本だ。


 少し離れた場所で、狙撃手の観察を行うと、発砲しやがった。その後銃撃戦となり、格闘戦が始まる。

 駆けつけた数人の警備兵に取り押さえられる、狙撃手。エージェントとしては、三流だな。逃走経路も考えていなかったのか。


「俺も逃げるか。巻き添えはゴメンだ」





 パレードは、発砲音こそあったが、無事に終了した。お姫様は、無事、城で接待を受けているのだそうだ。

 俺の仕事は、終わった。

 自分の家というか、秘密基地へ帰って来た。

 地下室に移動すると、通信が入っていた。


『敏腕エージェント、見事だったが目立っていたぞ? 今時、屋根伝いに移動するのはどうかと思う。それと、追加の仕事だが、件の政治家が戦争計画を練っているらしい。情報の奪取を行ってくれ。今しかないのだ』


「少しは労えよ!」


 いかん、いかん。冷静になろう。俺は、敏腕エージェントなのだ。

 それに、件の政治家が一家揃って家を空けるのは、歓迎会がある今日だけだろう。

 俺は、泥棒の装備を整える。全身黒の忍者スタイルだ。


(冷静になろう。心がささくれ立っていては、死に直結するんだ。それに久々のエージェントらしい仕事じゃないか)


 ここで、指にささくれがある事が分かった。ストレスかな?

 俺は、ハサミでささくれを切り落とした。そして、綺麗になった手にグローブをはめた。

 準備は、完了だ。


 心を落ち着かせて、俺は闇に溶け込んだ。目指す先は、件の政治家の家だ。





 こうして、今日もこの国の平和が護られた。

 敏腕エージェントの活躍は、終わらない。

 終わりが見えない戦いは、今後も続いて行く――かもしれない。

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