第17夜 男の娘と恋心とジョーの痕跡

ここは妖精村。




ザムザと美生が和やかなムードになっていて周りも自然と和やかなムードになっているところ、利奈子がそれを打ち破った。




「美生…そのくらいにしなさい。相手は紗生の味方よ…」


「!!!!ごめん、母さん…」




利奈子のその言に美生は元の調子に戻った。




「…ちゃん付けしたくらいで仲良しになった気になるんじゃないわよ、ザムザ!!!!」


「え!?あ、うん…ごめん…」


「美生さん、ザムザとあまり馴れ馴れしくしないで下さい!!!!」




美生とザムザがやり取りをしているのを見て、ついにラムソスがキレた。


怒りを露わにしているラムソスに、美生も敵対心を露わにした。




「なぁにぃ?この女、すごい生意気!!!!」




それにザムザがつっこみを入れる。




「美生ちゃん…ラムソスは男の子だよ」


「え!?!?女じゃないの!?!?」




どう見ても女にしか見えないラムソスを前に美生はギョッとした。


そんなやり取りを繰り広げる3人を利奈子が遮る。




「そのくらいにしなさいと言ってるでしょ美生…今日はこのくらいにしといてあげる。パナキのことは貴女が説明するのね、ベルデ…」


「オカマバーカ!!!!」




そう言い残すと利奈子と美生は水晶の闇に消えていった。




「キー!!!!ムカつくあのツンデレ女!!!!誰がオカマだ!!!!」


「ラムソスはオカマじゃないのにね」




と、激昂するラムソスをザムザが宥める。




「ラムソスは男の娘だよな」


「何?男の娘って…」


「男の娘っていうのは、オカマじゃない女の子のような男の子のことだよ」


「へー…」




というやり取りをスミレとエナがしていると、




「ラムソスは元から男の子ですけど、オトコノコっていうやつなんですか…?」


「ぼく、オトコノコなの…?」




と、ザムザとラムソスとモブの妖精達も話に混ざった。




「いや違う、男の娘って書いておとこのこって読むんだ。ラムソスはそれだな」




とスミレ。


するとラムソスとザムザが




「「男の娘…」」




と呟いた。




それを聞いていたベルデが




「何でこいつらそんなことに興味を持ってかれてるんじゃ…。レリーサ様と美生とパナキとファヤウのことをもうそっちに置いておいておる…」




と愚痴った。


利奈子と美生とパナキ姫と紗生の話題に戻るのはもうちょっと先である。










場所はダヂオの町、ジョニー達のたむろする場所に移る。






「で?俺に何のようだ?エスカーとユーキ」




酒と煙草をヤりながらジョニーがエスカーとユーキに尋ねる。




「弟に会いに行きたいんっすよねェー、でも怖くて」


「あ゛?弟?坊主の見習いの方か????会いに行くのは無理があんじゃねーか?」


「いえ、ザムザじゃなくて。アザムの方で」


「坊主じゃない方か?盗賊の?」


「そうそう」




そうジョニーとエスカーが言葉を交わす。




「武装しねーと無理だろ。あのガキらすぐ追い剥ぎやったり刺してきたりするしよ」


「だからジョニーさんにお願いに来たんじゃないっすかァー!!!!何とかなりませんか?弟に会いたいんすよ」


「仲介人をつけろってことか?お前ら金持ってんのか?」


「そこを何とか!!!!」




パンッ!!!!とエスカーが両の手を勢いよく合わせ目を瞑り頭を下げジョニーにお願いする。


ジョニーはそれを確認すると酒をゴクリと飲み込みゲップをし煙草のような物を吸って吐くと、エスカーと裕生にこう言った。




「安くはしてやってもいいけどよォー…」




その一言にエスカーと裕生は笑みを浮かべ顔を見合わせた。


そうした後エスカーは




「いくらっすかね…?」




と聞くと、ジョニーは6を手と指で表した。




「6万っすか?高いっすね…」


「いや、オメーこの町出てくんだろ?」


「はい」


「オメーは小間使いに丁度良かったからよォー、暫く会えねーなら6,000でいいや」


「!!!!」




エスカーは口をОの字にして無言で裕生の肩に手を置いて裕生の顔を見ながらピョンピョン飛び跳ねた。


裕生は




「や、安いのか…?」




とエスカーに尋ねると




「安いよ!!!!破格だよ!!!!あざまァーーーーッす!!!!」




とジョニーにジャンピング頭下げをした。


裕生もつられて頭を深々と下げる。




「おー。そうだなー、誰がいいか…」




そう言うジョニーに、斜め後ろにいたスキンヘッドの髭ヅラゴリマッチョが




「あいつがいいんじゃねーか、ジョニー…テンってガキ連れたあの兄貴の方…」




と言い、ジョニーがそれに返事し




「ああ、あいつか。いいんじゃねーか。同じガキだしな」




と言った。




裕生とエスカーは「????」となった。




「なあ、誰か那波斗なはとに伝えてくれ、仕事だって。ヒールの奴らに仲介頼むってな」
















ヒール総本山の洞窟。






紗生が華留美とジャンとジャンの所属する4番隊の寝床で横になっている。


前のような一人用のベッドではない。


ベッドのようなベッドが所狭しと置いてあり、そこに組員達が数人ベッドに腰掛けている。


紗生は筋肉痛で寝ているのだ。


横にはダンテと華留美とジャンとフェインがいる。




「ううー…」




と紗生が軽く唸る。




「頑張りすぎちゃったね」




と華留美。




「だっさ!!!!体力なさすぎ」




とダンテ。




「仕方ねーだろ、寝たきりだったんだから。筋肉痛だって。1日ゴロゴロしてマッサージしたりしてたらマシになるだろ」




とジャン。




「え?何?何て言ったの????」




と華留美。




「1日ゴロゴロしてろよって言ったの。お前も何か言えよ!!!!」




とジャンはフェインを小突く。




「ん、お、すまん…。早く良くなるといいな…」




とフェイン。


フェインは筋肉ムキムキで上半身裸に鎖帷子を付けて下はゆるめのズボンを穿いていて一見ガラが悪いがジャンには優しい。




ジャンに惚れているのだ。




だがそれを表に表すことはない。




「アザムはどうした…」




と紗生。


それにピクッとする華留美。


ジャンとフェインが




「アザム?アザムは仕事してるぜ」


「な…」




と言う。


紗生は




「そうか…私がこんなだから仕方ないな…」




と言った。


そこに華留美が




「アザムのことがそんなに気になるの!?!?!?!?」




といきなり大きな声を出した。


それにビクッとする紗生と、驚く一同。




「なんだ!?どうしたカルミん!!!!あいつのことがそんなに気になるのか!?!?!?!?」




とジャンが華留美に冗談ぽく大袈裟に言うと、華留美はカーっと顔を真っ赤にした。


それを見てダンテは




「…もしかしてカルミんってアザムのこと好きなんじゃない!?」




と言い、勘付いた華留美が顔を耳まで真っ赤にしたまま汗を吹き出し手を固く握り目を瞑り、体を緊張させその場に立ち尽くした。




「そうか、カルミんはアザムのことが好きなのか」




とジャン。




「…別に私はアザムのこと何とも思ってないよ?」




と筋肉痛を堪えて上半身起こし、紗生が優しく華留美に話しかける。




「…………本当?!」




と華留美が顔を真っ赤にして拳を握りしめたまま体の緊張を少し解いて涙目で紗生に反応する。




「だってさ、カルミん。良かったね!!!!」




とダンテ。


どうでも良さそうに頭に手を回し組んでふあ~~~~と欠伸をする。




「良かったじぇねーかカルミん!!!!希望はあるぞ!!!!」




とジャン。


華留美の顔は元に戻り体の緊張も解かれ、華留美は汗を服の袖で拭いた。




華留美の小さな恋はまだ走り始めたばかりである。


















――――所変わってここは死者の森。






アザム達は死者の森で何かの跡を探していた。


あの「ジョー」達3番隊のいた痕跡を探していた。




「闘りあった跡がありますね」


「ああ、ここら辺でサキとジョー達3番隊が闘りあったんだろ」




とハルキとアザム。


そこら中の木の枝が切れていたり折れていたり足跡が無数にあったり木の幹やその辺の植物も傷ついていた。




血も飛び散っている。




「ジョーはサキって女の追い剥ぎをしたかったんでしょうね。金持ってなさそうだけど」


「どうだかな…」




1番隊組員のジェイサムがアザムに話しかける。


言い得て妙だ。


紗生はどう見ても金があるように見えない。


それに何故、剣士とは言え女1人とそのツレのパンピー2人をそんな大勢で襲ったのか?




(そう言えばサキは山を歩いている時に、ツレは2人で子供の異教徒だと言っていたな…。異教徒?もしかして…)




「…ザムザかも知れない」


「「「「「「「「「「え????」」」」」」」」」」




突然のアザムの言に1番隊の連中は吃驚した。




「…ザムザって、アザムさんの双子のお兄さんの…ですか?」




とジェイサム。




「ああ」




とアザム。




「ザムザさんがどうかしたんですか?」




とハルキ。




「…サキが連れていたツレの1人はザムザかも知れない。だとしたらますます金があるように見えない。魔女狩りか?」




とアザム。




「取り敢えず追い剥ぎしたかっただけじゃないっスか?」




とジェイサム。


それにアザムは黙り込み、1番隊の組員は少しザワザワする。




「ジョーはサキだけじゃなくあいつも襲いたかった…?あいつは今どこにいる…?」




とアザムは言葉を吐いた。

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時の破壊者 辻澤桐子 @kirico612

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