エンドロール
次に目を覚ますとソウマの膝の上だった。
「大丈夫?かなり苦しそうだったけど…」
「…え?あぁ、大丈夫。それよりさ記憶……結構思い出したよ」
「知ってるよ。さっきまでキミがこれまで生きてきた映像が流れてたんだ」
「…赤子が泣いてるやつ?」
「そうそう、それ。前は途中で終わって不思議に思ってたんだけどまさかキミの話だとはね」
「そっ、か…見てみてどう感じた?」
どこかしんみりとした顔をしたソウマを見つめていると言葉が出ていた。
「え?どうって言われてもなぁ…」
ソウマはうーんと唸りながら首を左右に傾げ始めた。
「…姉妹の話と違って、俺は全部諦めて自分で死を選んだ」
「そうだね」
「その…俺は生きててよかった人間だったのかな……って。
親に迷惑ばっかかけて、さ。結局環境のせいにして腐った自分を許せなくて……」
「もしキミが自分のことを許せないっていうならボクが代わりにキミを許すよ」
「…え?」
「キミはもう
お母さんのこと、誰にも話せなくてしんどかったんじゃない?」
「その……よければキミの思い出した記憶、キミから聞かせてほしいな」
「俺は……」
結局、誰にも話さずに死んだ今、あの時の誓いはもう時効だろうか。
もう…いいのか?
「俺…は…、おれ……は」
全部話したい。けど、何から話せばいいのかわからない。
呼吸がどんどん荒くなる。呼吸のやり方すらままならない。
もし、失望されたらどうしよう。やっぱり話さない方が……
「大丈夫。ボクは消えたりしない。キミが望むかぎり一緒だ」
ソウマはぎゅっと手を握り優しく話しかけてくれる。
「俺は……生きるのがずっと苦しかった」
「うん」
「ずっと認めて欲しかった」
「うん」
「この苦しさを誰かにわかって欲しかった!! でも!誰にも迷惑はかけたくなかった!」
「うん」
「だから必死に隠した。いつかこの苦しみを見つけてくれる人が見つかるだろうと思って…」
「うん」
「でも…結局誰も俺のことは見つけてくれなかった。結局全部無駄だったんだ」
「……それは違うよ」
「全部無駄なんかじゃない。だって、ボクがキミを見つけた。キミががんばってきたことも苦しんできたことも、全部知った。
全部知った上でボクはキミを認める。がんばったね、もう1人で抱えなくて大丈夫だよって」
ソウマの握る手はどんどん強くなり、少し震えていた。
「泣いたっていいんだ。泣き疲れたら一緒に笑おう」
……あぁ、そうか。俺、やっと見つけてもらえたんだ。
死ぬ前に君に会いたかったな。そしたらもっと楽しい人生だったろうな…。
「…………ありがとう、ソウマ」
「へへ、どういたしまして」
ブーーー
開演を知らせるブザーが鳴り始める。
「ほら、ヒナタ。次が始まるよ!いっぱい泣いたし、次は笑えるような話だといいなぁ」
「そうだな」
俺はしばらくはここで生きていく。
死ぬ前にやり残したことは無くなったから消えてしまうだろうけど、それでも消えるまではソウマと一緒にいたい。
もらった分を返さないと。
次第に周りは暗くなり、スクリーンが再び白く光り始めた。
◇
film -end-
Film のなめ @noname118
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