【KAC20244】ささくれ姫

雪うさこ

ささくれ姫


 むかーしむかし、あるところに、うつくしいお姫様ひめさまがおりました。お姫様ひめさまは、はやくにお父様とうさまとお母様かあさまくし、ずっと一人ひとりぼっちでした。


 お姫様ひめさまのお世話せわをしてくれたのは、侍女じじょのノラでした。ノラはお姫様ひめさまあかちゃんのころからお世話せわをしてくれているのです。なので、お姫様ひめさまはちっともさみしくはありませんでした。


 お姫様ひめさまきなものは「美しいもの」です。お城中しろじゅうをピカピカにみがき、にわにはたくさんのはなかせます。いつもなりはうつくしく。一度いちどたドレスはてて、いつでもあたらしいドレスをまといます。


 お姫様ひめさままわりの家来けらいたちは、彼女かのじょのぞみをかなえようと、しんではたらいてくれたのです。


 ところがある、いつものように、ノラにかみをすいてもらっていると、お姫様ひめさま首筋くびすじいたみがはしりました。ノラの指先ゆびさきにできた、「ささくれ」がさわってしまったのです。お姫様ひめさまおこしました。


「なんだ、そのみにくは。そのわたしれるな」


 お姫様ひめさまはノラをしろからしてしまいました。


 侍女じじょうしなったお姫様ひめさまは、つぎ侍女じじょやといました。しかし、彼女かのじょもすぐに「ささくれ」ができたので、しろからしました。


 さらつぎ侍女じじょも。つぎも。そして、城中しろじゅう家来けらいたちも。こうしてお姫様ひめさまは、ひとりぼっちになってしまいました。


 しろててしまいました。お姫様ひめさまのドレスもボロボロです。なんとかしようとしても、いままでなにもしてこなかったお姫様ひめさまには、どうすることもできませんでした。


 そんなある一人ひとり老婆ろうばがやってきました。彼女かのじょは、たび途中とちゅう一晩ひとばんめてしいとうのです。お姫様ひめさまはさっそく老婆ろうばむかれると、なに食事しょくじつくってくれるように命令めいれいしました。


 しかし。老婆ろうばいます。


わたしとしえません。手伝てつだってくれるのなら、なにつくりましょう」


 おなかがぺこぺこだったお姫様ひめさまは、老婆ろうば手伝てつだいをすることにしました。お姫様ひめさまにとったら、はじめてのことばかりです。


 みずつめたいこと。

 あついこと。

 刃物はものあつかいのむずかしいこと。

 野菜やさいにはつちむしがついていて、こわいこと。

 料理りょうひには、とても手間てまがかかり、そしてがまんも必要ひつようだとうこと。


 けれども、できあがったスープの美味おいしいこと!


 老婆ろうばは、彼女かのじょにぎります。


「がんばりましたね。あなたが、こころめてつくったスープ。一緒いっしょにいただきましょう」


 そこでお姫様ひめさまおどろきました。お姫様ひめさま指先ゆびさきには、あのみにくい「ささくれ」ができていたのです。


 お姫様ひめさまがつきました。ノラたちが、どんなに大変たいへんおもいをして自分じぶんささえてくれていたのか。彼女達かのじょたちにできた「ささくれ」はみにくいものではない。あれは。そう。


 あい愛情あいじょうです。みずからをかえりみることなく、はたらひとあたたかいだったとうのに。


わたししてしまったの。みんなをきずつけて」


 お姫様ひめさまから、なみだがポロリとこぼれます。老婆ろうばわらいました。


大丈夫だいじょうぶよ。彼女かのじょたちは、いまでもあなたを心配しんぱいして、しろのそばのもりにいます。だれとおくへはっていないのです」


 目深まぶかかぶっていたフードを老婆ろうば。いえ、老婆ろうばではありません。そこにいたのは、ノラです。お姫様ひめさまはノラにきつきました。


「みんな心配しんぱいしていますよ。私たちをおもどしください」


 こうして、ノラたちは無事ぶじしろもどってきました。しろには活気かっきが戻り、そしてうつくしさがもどりました。ただひとちがっているのは、お姫様ひめさまがエプロン姿すがたうごまわっているとうこと。


 こうして、お姫様ひめさまはみんなと仲良なかよらしていくことができましたとさ。


 おしまい。


 



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