その匣は、今もそこに在る

知ってはならない。
 知らぬ限り、その災厄は訪れない。
そぼ降る冷たい雨の中、蓑笠を着たモノが
行く山路、その硲に置かれた寺での譚。
 八角形の御堂に住まう者『黒い焔』より
人々を守る。
       災厄は、その匣の中に。

 知ってはならない。知らぬ限りは ──。

思い出そうとすると痛み出す。
存在しない匣の中。

【硲ノ箱─『知ってはイケナイ。』
           ─目録 弍】

  この連作よりまろび出た 匣 

寺を守る者たちの穏やかな日々は
 忘れられた匣の記憶と共に。

 森閑とした静謐さの漂う気品ある掌編。