第3話 : 栖呉半島到着前夜

俺はその日の夜 とある酒場に来ていた…。

「よ、よぉ…」

「あ、来てくれたの!えっと…鳴雛なひなくんだっけ?」

あいかわらずテンションが高い子だなと思いつつ俺も自己紹介をする。

鳴雛羽紅なひな はくだ、よろしくな」

俺が自己紹介をすると目を輝かせ俺の手をにぎると

「私はね、香椎夢夏かしい ゆなつだよぉ!よろしくね!はっくん!」

はっくんて…この表現があってるのかはわからないが香椎は俺の顔を見るやぴょんこぴょんこと跳ねては喜んでいた。

「そういえば、他の奴らは?来てないのか?」

そう尋ねると 香椎は少し下を向くと悲しげな表情で電光掲示板のようなものを指さした…

そこにはいくつかの部屋が映し出されており 部屋にはいっている人の名前が書かれていた。

「みんな、円しゃんのところに言っちゃったんだ…だからね、はっくんもそっちに行くんだろうなって…そう思ってたから来てくれた時は嬉しかったんだよ…」

そんな、俺は…俺は何もしていない…ただ…

「俺は特になにもしてねぇーよ、そもそも香椎が最初に言い出したことだろ…だから俺はこっちに来た ただそれだけだ。」

俺がそう言うとまた香椎は微笑み…

「それでも、嬉しかったんだ…」

俺がしたことで誰かが喜んでくれた…それは香椎だけじゃなくて俺も嬉しいことだった。

「ねぇ、はっくん…私たちでクランを作らない?もちろんリーダーははっくんで!」

俺のクラン…俺らのクラン…

「あぁ、香椎…俺らの…」

「やめとけよなぁ〜ヒック…何抜けがけしようとしてんだ 香椎おまえ…ヒック…鳴雛はお前じゃなくて〜紫庵しあんにお似合いなんだからよぉ〜」

…と顔を真っ赤に染めた鳴宮なるみやがいきなり入り込んできた。おそらくかなりの量飲んだのだろう…。

「酔いすぎだよすずめん、落ち着こ?」

そう香椎が落ち着かせようとするも変わらず

「おまえごときがぁ…ヒック…何を鳴雛に近づこうとしてんだ?ヒック…身の程を知れぇ!ヒック…ほら行った行った さぁさぁ、鳴雛 俺らのところへ紫庵も待ってるからねぇ〜ヒック…」

香椎のことをそうあしらうと俺の肩に手を置いてきた。

それを見ていた香椎は一瞬下を向いて俺の方を見てニコッと笑うと後ろを向いて歩き始める。

「やっと、身の程をわきまえたかwささ、あんなやつほっといて行こう鳴雛」

鳴宮はその後ろ姿を見るやそう言い放った…

「香椎っ!どこ行くんだよ」

俺は鳴宮の手を振りほどき香椎の腕をつかんだ

「はっくん…私……」

振り向いた香椎の目からは涙がこぼれていた…

「俺が組むって決めたんだから香椎が離れる必要なんてないよ」

「わわわ、わかった…しかたねぇ、香椎も一緒に呼んでやる、だから鳴雛 俺らのところに来てくれ」

仕方なく…香椎を加えてやるそんな言い方だった…そんな言い方で俺がなびく訳もなく…。

「断る…俺はお前らとは組む気はない…そんな仕方なく入れてやるなんて言い方されてはいったら その後香椎がどんな仕打ちを受けるかわからねぇ」

それでも引かない鳴宮は今度は香椎の手を掴む

「おい香椎!俺らの所に入れるんだぞ?そんな光栄なことないだろ?なぁ?だから早く鳴雛を説得してくれ!」

手を掴まれた香椎はビクビクしていた…。

「離せよ!誰に説得されても俺はお前らのところに行かないし 香椎も行かせない。帰ってくれ」

鳴宮が手を離した瞬間 香椎は俺の後ろに隠れたとても震えていた…。

「んだよそれ!俺らのところに入れば幹部、いや最高幹部レベルになれるんだぞ!なりたくねぇーのか?」

まだそんなことを…まったくふざけた野郎だ…

「幹部?最高幹部?そんなのお断りだ!俺らはリーダーと副リーダーだっ!おまえらが最強?だったら超えて俺らが最強になってやる!なぁ、香椎っ!」

「うんっ、はっくん!」

そう言って香椎は笑ってみせた…

一方、鳴宮はというと…怒っていた、ものすごく怒っていたw

「あぁ、そうかよ 俺らがせっかく誘ってやって、そのろくでなしも誘ってやろうって優しくしてやってるうちに聞いておけばよかったものを…しらねぇからな後悔しても…」

そう、言い捨てて自分のホームに帰って行った。

そして俺らは改めて正式にクランを結成することにしたのだった。

その名も…

「ダイスベル…」

1歩1歩確実に進み 鐘の音のように仲間をみんなを癒せるように楽しくやるクランだ…

するとそこに1匹の迷い犬がやってきて鳴雛の目の前に座った…

「わぁ、可愛いわんちゃんだよ おいで~」

「それにしても珍しいな、おまえどっから来たんだ?」

そう言いながら撫でていると目の前にコマンドが表示されていた。

「はぁ!?テイム完了だ?そんなことしたつもりは無いんだが…まぁ、しかたねぇか…これからよろしくな。」

俺がそう言うとその犬は目をキラキラと輝かせながらしっぽをぶんぶんとふってこちらを見ていた。

「なんだなんだ?おい、どういうことだよ、なにしたいんだ?」

「名前をつけて欲しいんじゃないかな?その子…」

香椎がそう言うとワンっとひと吠えするとニコッと笑っているかのような表情を見せた…

「にっき…」

「はっくん…?」

俺はそう口に出していた…

「おまえの名前は今日からにっきだ!」

「わんっ!」

名前が気に入ったのかさっきより激しくしっぽを振り俺に抱きついてきた。

それから俺の顔中を舐め回すと横にちょこんと座った。なんとまぁ、賢い子なんだろう…

「きっと、はっくんに名前をつけてもらえて嬉しいんだろうね!よかったね~にっき~」

「さて、仲間も増えたことだし そろそろ次の街にでも向かうか…さぁ、出発だ にっき、香椎!!!」

って、まだ到着もしてないんだけどな…

「ご乗船の皆様誠にありがとうございます。まもなく栖呉半島 栖呉半島…到着までもうしばらくお待ちください…」

ようやく来たか…

「栖呉半島…」

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下剋上の塔 雛奈. @hinarita053

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