第2話 : 固有組織

翌朝、船内にある広場のような場所に行くと数人だがもう集まって何か話しをしていた。

「なんだか妙に騒がしいな…」

騒がしい…というよりみんなどこか必死な表情で会話をしているようだった。

「お〜、そこにいるのは昨日の無属性の子じゃないか!おはよ〜元気にしてるぅ〜?」

と、見覚えのない子に声をかけられてしまった…

「えっと…どもっす…」

「あ、そうだそうだ 私の名前は紫庵円しあん まどか一応、光属性だったよ!よろしくね〜」

と、俺が気だるげに話しているのが分かったのか少し引いた位置から自己紹介をしてきた、まぁ、引いた位置と言ってもほんとに少し…だったが。

「俺は鳴雛羽紅なひな はく…知っての通り無属性。よろしく…」

俺も一応 自己紹介をしておくと 紫庵はうんうんと頷きまた口を開いた…。

「それじゃあ、羽紅〜。お互いのステータスを教えあおうよ!ついでにフレンド登録も!」

フレンド登録…?

「フレンド登録なんてできるのか?ゲームじゃあるまいし…」

「あれ?羽紅は知らなかったの?ほら、あそこにある端末がそれぞれに配布されてあそこからアイテムを購入したり順位ランクがわかったり連絡をとったりできるんだって…それでね私の固有特殊能力マイスキルなんだけど〜」

なるほど、ここはゲームと言っても過言ではないということか、それにしてもよく考えればほんとにゲームみたいですごい技術だな…一体どうなってんだ?

ん?待てよ今この女 固有特殊能力って言ったか…?

「おい!待て待て待て そういう自分らの能力値ステータスなんかを言い合うのはやめよう。」

「どうして?」

紫庵はそうポカンとした表情で聞いてきたのでしっかりと説明することとする。

「今は大まかに世界を相手にと言ってはいるけど 固有組織クランを作ってって言うくらいだからなにか裏があるかもしれない だから何も分からないうちからお互いの手の内を晒すのは辞めたいって言うことなんだ…。」

そう説明すると 紫庵は拳を反対の手のひらの上でポンとならすとまた口を開き話始める。

「なんだぁ〜簡単なことじゃない!なら、その固有組織ってのを作ろう!それで… 固有組織ってなに?」

固有組織をつくろうだって?いきなりこいつは何を言いだすんだ。

「あのなぁ…作るったってそんな簡単には…っては?今なんて言った?固有組織ってなにって聞いたのか?」

「うん、そうだけど…でもあれでしょ?要は家族!みたいなもんでしょ?私作るから羽紅もはいってよ!えっと…あ、これか!ここをこうしてこうやってこうしてあーして…」

「まぁ、家族…であってるとは思うけど、って紫庵?なにやってんの???」

「できた!」

で…きた?できたってまさか?いやいや、さすがにそんな…

「これでいいんだよね?」

やっぱりそのまさかだったー?

「風運P同盟フーンパワー同盟!これが私たちのクラン名!力!つまりパワーを風が運んできてくれる その名も風運P同盟!」

なんてセンスのない名前なんだ…ってか、いま私たちのって言ったか?

「なぁ、紫庵…気の所為じゃなければなんだけどさその私たちの中に俺も含まれてる?」

恐る恐る尋ねると紫庵は首を縦に振る。

やっぱりか…やはりそうだったか…。

「あのな、俺は紫庵のクランに入る気はないんだが」

「え…」

「え、じゃなくてな?俺は…」

「お、声が聞こえるから誰かと思って来てみれば鳴雛と紫庵じゃないか」

俺がクランに入ることを渋っていると昨日固有特殊能力について質問をしていた男 露根晴つゆね はるがやってきた…。

「晴〜おはよう!」

「おはようございます。」

「あぁ、おはよう それで何の話をしてたんだ?」

俺は今まで話していたことを簡単に話した。

紫庵がお互いの能力を教え合おうと言ったこと、俺がそれを止めたこと、そしてそれならクランを作ろうと言い始めたこと。

「なんだそういう話だったのか そうだなあまり自分の能力値を人に話すのはよくないな。でもなぁ、紫庵…」

「なんだろう?晴」

「鳴雛をクランに入れるのは俺だ 俺らWIN.comにな!」

「はぁ!?何を言ってるの?私たちの風運P同盟なんですけど!」

はぁ、なんでそういうことになるんだ…まぁ、こうなった以上適当に話を進めるわけにはいかないな…

ここははっきりと言わないといけないな…。

「俺は誰かの下につくつもりはない、こういうゲームな現実なら特にな…。だからもしクランに入る時は俺自身がクランを作る時だ」

俺がそう言うと2人はとても悲しい表情をして 悩む素振りを見せた。

「鳴雛がダメとなるとどうするかなぁ〜」

「んー、どうしたらいいのかなぁ…」

「あのぉ〜こんにちわ!」

2人がそう考えているとひとりの女の子がぴょこっと間を割って話にはいってきた。

「私は香椎夢夏かしい ゆなつです、よろしくお願いしましゅ」

「ついでに…俺は鳴宮涼芽なるみや すずめ よろしく。」

ついでにって…ほんとここは自由な人ばっかだな…。

急に現れた2人に唖然としている露根と紫庵、それでもお構いなしに香椎は口を開いた…

「そういう話し合いとか仲良くなるためってのを兼ねて今日の夜飲み会みたいな場を設けようと思ってましゅ!よかったら来てね!」

「おぉ、それはいいな!」

「いいね、楽しく話せそうだ」

露根、鳴宮も好反応だった。ただ、紫庵はそうではなかったのか…

「えっと、夢夏ちゃんだっけ?その案いいね!うんうん、私も今日の夜飲み会開こうと思ってたんだ〜是非是非来てねぇ〜」

あたかも自分も同じことを思っていたと言わんばかりに発言をしはじめた紫庵…まぁ、おそらく嘘だろうなと思うけどな。

まぁ、どちらにせよ俺が向かうのは…。


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