ささくれ、か……

一陽吉

さてどうするかな

 さて、今回のお題は何かな。


 スマホを出して、サイトを開いて。


 ええと。


 う、うん!?


 ささくれ!?


 ささくれ、て、あのささくれか?


 いや、俺の勘違いかも知れない。


 ググってみるか。


 ええと。


 だよな。


 思ったとおり、爪ぎわの皮がさかむけるのでいいんだよな。


 うーん。


 ささくれ、で小説。


 俺の指にもあるが、どうしたものか。


 前回のお題、箱とかなら、宝箱でファンタジー物、ゴミ箱に死体でホラー物とかいろいろ考えられるが、今回はささくれだもんな。


 ファンタジー物で、魔王の弱点はささくれだった。

 ホラー物で、迫りくる恐怖のささくれ。


 なんてやってもギャグでしかない。


 となれば現代ドラマとか、日常的なものがしっくりくるよな。


 それで思い出すのは若い頃、法面工事現場作業員のりめんこうじげんばさぎょういんとして働いていたときに、軍手を二重にしたり、軍手の上にゴム手袋をはめたりして、市販の防寒手袋と同等の性能を引き出していたが、軍手の網目にささくれが刺さって、つけるにもはずすにも苦労したっけ。


 まあ、外で働いているのはいまも似たようなもんだが、いまは安くていいのがあるからな。


 よっぽど寒くないかぎりは軍手を使わないのが現状だ。


 て。


 おや?


 エンジン音。


 トラック系だな。


 誰か来たのか?


 ちょっと行ってみるか。


 ……。


 あ、現場へ行ってるはずの平トラックが来てる。


 声をかけるか。


「お疲れ、健吾君」


「あ、お疲れ様です」


「現場、もう終わったのかい?」


「いえ、まだです。ちょっと資材が足りなくて取りにきました。ほんのちょっとなんで高木さんは休んでてください」


「そうかい? じゃあ、気をつけてな」


「はい!」


 いつも元気な返事だな、健吾君は。


 本来なら資材センター担当の俺も手伝うところだが、お言葉に甘えて詰所つめしょに戻るとしよう。


 まだ昼休みだしな。


 半世紀生きてる俺と違い、健吾君は二十五歳。


 いくらでも無理がきく年だし、気遣いもできるから本当にいい子だ。


 そういやあ昔、ささくれた性格で何でもかんでもつっかかる奴がいたな。


 先輩と口論になって辞めたっけ。


 て。


 !?


 ささくれ、性格の意味でもあるじゃないか!


 それならちょい悪の主人公でファンタジーでも何でも書けるぞ。


 ようし。


 三時の休憩に大まかな展開を考えて、帰ってからパソコンで執筆だ!

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ささくれ、か…… 一陽吉 @ninomae_youkich

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