あなたのことば
蒼河颯人
あなたのことば
あなたの発することばは、
温かいはちみつのようにゆっくりねっとり、
わたしのささくれだった心のひだのひとつひとつを、
少しずつ、息をひそめながら埋めてくれる。
優しく、包み込むように埋めてくれる。
それはまるで、
わたしの身体を抱きとめてくれる、
あなたのたくましい、汗ばんだ両腕のようだ。
気持ち良くて、永遠に包まれていたくなる。
あなたのことばは、
こんがりと香ばしく焼けたトーストの上で、
黄金色のバターとともに、
とろとろにとろけあって、混じり合い
口の中へとほどけてゆく。
こわばった心がゆっくりとほどけていく。
雪のようにすうっととけてゆく。
そんな、極上のしずくだ。
あなたのことばには、人肌程度の温もりがあって、
心のかさついたひだとひだの間に、ゆうるりと流れ込んでくる。
それはまるで、砂漠で行き倒れた旅人ののどを潤してくれる、オアシスの泉のようだ。
どこかで一瞬ひっかかって、
だけどそのまま手離してしまった、
言葉にならない、その思い。
あなたのことばは、そんな乾ききった心の中へとしみわたり、しっとりと潤してくれる。
痛んだ心によりそって、癒やしてくれる。
硬くなった心をなでて、ほぐしてくれる。
あなたのことばで、
わたしの心は溶けだすように熱くなって、
わたしの胸はじんわりと熱くなって、
思わず目から涙があふれてきそうになる。
心の奥から揺り動かされるような熱い感情を感じる。
全ての心のすきまをうめるかのように満ちてくる、熱い熱い、揺るぎないその思い。
わたしは舌の上で、あなたのことばをゆっくりと転がしながら味わう。
何度も何度もそしゃくし、味わい尽くして、音もなくのみくだす。
それはやがてわたしの血となって、身体のすみずみへと流れてゆくのだ。
ああ、髪の毛から足の爪の先までとっぷり、あなたのことばに浸かりたい。
これ以上干からびぬように、沈み込んでしまいたい、あなたのことばに……。
あなたのことばはわたしにとって、何者にも代えがたい、極上の甘露だ。
あなたのことば 蒼河颯人 @hayato_sm
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