[KAC20244]悪魔が召喚者に対して心がささくれ立つ理由

めいき~

とある悪魔が召喚者に対して心がささくれ立つ理由

俺の名は、サーミ。サーミ・グロイス。


魔法が得意な、上級悪魔だ。


我ら、悪魔は召喚者の願いを対価を貰い叶える事で力を増していく。



……のだが、ふっざけんな!!と思う事の連続で少々苛立っている。


いかん、いかんぞ。悪魔らしくスマイルを崩さない様にしなくてはな。




大体、記念すべき俺の初仕事……。


それは、夕実とかいう女が俺に願ったんだ。


「ごめん、悪魔さん。猫の手も借りたいんだ~、引っ越しの手伝いをお願い出来ないかしら」


俺は笑顔で言ったんだ、お安い御用だと。

そして、絶望を知る事になった。



「何で!このタンスもこの雛壇も何もかも魔法がきかねーんだよ!!」

「夕実いわく、この世界には魔法ってものがなくて機械か手で運ばなくてはならないらしい」


俺は、契約してしまった事を心底呪いながらもビル二十五階までの引っ越しを非常階段を往復しながら荷物を運び続け最後は大の字でぶっ倒れながらもなんとかやり遂げて夕実にこう言ったんだ。


「二度と呼ぶなよ!」


魔界に帰った俺にはしばらくの間、腰やら腕のケアが必要で治癒魔法のレベルも二上がってしまう位にはガタがきていたのは覚えている。




次に呼ばれたのは、隆志と呼ばれる男の所だった。




「すまないが、悪魔殿手をかして頂きたい」そう頭を下げる男、俺も悪魔の中の悪魔だ。対価さえきっちり払ってもらえるならば喜んで力を貸そうじゃないか。


俺はそっと爽やかに手を出し、隆志とがっちりと握手を交わす。



「それで、俺は何をすればいいんだ?」隆志と呼ばれた男は外を指さし言った。


「うちの騎士団が走るのを追いたてて欲しい」と、魔法は訓練場の仕様で使えないってまたかよ。


ヤケクソになった俺は必死に男たちを追いかけ、俺に触られると鬼教官が竹刀をもって腹筋やら背筋やらスクワットやらをやらせていた。


「おい、悪魔の癖におそいぞ!」「俺は魔法使いなんだよ、そんな早く走れるわけねぇだろ!」


再び、俺は自分を呪った。ったくなんでどいつもこいつも……。

しょうがないから、投げキッスやら愛の言葉をささやいたら何で全員逃げる速度が加速してんだ。何、必死に逃げてんだっておいちょっと人間共め。


それでも、俺は悪魔だ。プライドを総動員して、死ぬ気で追いかけ何とか訓練が終わるまでに十五人脱落者にして魔界に帰った。


俺は魔界に帰るまで、出来て当然だと言わんばかりのニヒルな笑顔を浮かべながら足はまるで生まれたての小鹿でもこんな風にはならないと言わんばかりのガクガクのプルプル。



その後、俺は再び人間界で騎士団の連中が悲しい笑顔を浮かべながらくれた塗り薬を塗ろうとしたら手が釣って余計に痛いだけだったので使い魔を召喚してぬってくれと言ったらものごっつ不満そうな顔をされた。げせぬ……、俺だって好きで筋肉痛になっている訳ではないというのに。「背中に手で塗れって新手の拷問ですかだと、好きでおばさんになった訳ではないぞ畜生が」


更に、治癒魔法のレベルが二上がったのは何の嫌がらせか。


悪魔であるにも関わらず、一番レベルが高いのが治癒魔法でしかも原因が自分の筋肉痛なおしていたから等と。



次に、呼び出された場所は金髪ロールのコーネリアという奴の所だった。



「悪魔さん、アナタの力を借りたいの」次は失敗せぬと、契約内容を尋ねた。


「戦争で……」そう聞いた瞬間俺の心は一段跳ねた。


「任せておけ!!そういうのは得意だ」「まぁ頼もしい」



俺は、その優しい笑顔に騙されたんだ……。



その後、俺は重量級の食料やら武器を満載した馬車を本当の馬車馬の様にリアカーみたいに引いて戦場を走り回り。街や村の連中から、感謝と喝采を浴びた……。



俺、戦うんじゃないんです?殺す方が得意ですよ?何万人でも行けますよ?魔法でずがーんとやれますよ、皇帝の首でも取ってきましょうか?



「いえ、そういうのは間に合ってますの」「じゃ何で呼んだよ!、傭兵や冒険者でいいだろが」「そういうのを雇うお金はありませんの……、戦費がかさんでしまって」


「いや、確かに俺は悪魔だから金よりも魂やら魔力上限値何かをもらうもんだけどさぁ。納得いかねぇよなぁ!」



結局俺は、大陸横断ウルトラ馬車馬労働コースをやりきって魔界に帰って来た時に再び足がパンパンになって自身の脚に優しく話しかけながら一滴の涙をこぼして「お前よく頑張ったなぁ……」と言いながらマッサージをしつつ。


悪魔神生という演歌を聞きながら、自棄酒をしていたのは覚えている。



枯れぬ乙女の使い魔を呼び出して、一曲歌ってもらおうとお願いしたら往復ビンタされてそういうサービスはしてないのって言って帰られたりしたな。


次の召喚者も、次の召喚者も全部肉体系の仕事ばっか。ある時言われたんだよ、お前本当に魔法系悪魔かってさ。うるせぇよ、バリバリの魔法系で頭脳系の乙女だよ。何?嘘つくな?ついてねぇよ、ステータス確認しろ。





「あぁ、残念な事に俺はこの通りムキムキのバキバキの魔法系悪魔さ。どいつもこいつも俺にやれ引っ越しだの物流だの毎回重労働頼みやがって!」






悪魔だって、専門外の事ばっかやらされてたら心も荒むもんだぜ?

こんな事、八千年ぐらいやってみなよ。心も荒んでささくれぐらいするもんだ。


あぁ、今日も自分の回復魔法と治癒魔法のレベルの高さを他の悪魔に叩かれるんだ。

ありゃ、天使や神の御業だからな。



ド畜生が、世の中理不尽が過ぎるって。

今日も魔界に帰って、シャツ一枚で窓辺に座って冷たいビールでも傾けなきゃ悪魔なんてやってられねぇよな。


「せめて、男の悪魔に頼めってんだ!今じゃ下手な男の悪魔よりも俺の方がバキバキになり過ぎて先日もシャツのボタンが飛んでったんだっけか」そういって、枕元にあるフクロウのぬいぐるみを抱きしめて眠りについた。




<おしまい>

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