第3話天才が愛したアンドロイド

十文字が亡くなってから一年が経った。


彼の遺言で、アンドロイドの瑞樹は今僕の家にいる。彼女は本当に良く出来ていて僕が知っている頃の瑞樹の細かい癖や仕草なんかも完全に学習が出来ているようだった。時々僕でさえ彼女がアンドロイドであるのをうっかり忘れてしまう事だってある。

「瑞樹、今日は寒いね」

『えっ?』

「あ…いやなんでもない」

(アンドロイドに寒いとか判る訳ないだろ…何言ってんだ僕は)


その時だった。

『痛っ!』

そう言って、瑞樹が自分の手の甲をじっと見つめていた。

「えっ、どうしたの瑞樹?」

僕は瑞樹の傍に駆け寄って、彼女が見つめていた手の甲に目をやった。

「まさか、これ!」

アンドロイドである彼女の右手人差し指の爪の横に小さなが出来ていた。そういえば十文字は瑞樹が亡くなった時、最後まで彼女の手が脳裏に焼き付いて離れなかったと言っていた。それにしたってこんなに細かいところまで…

それに瑞樹さっき『痛い』って言ってたよな…アンドロイドに『痛覚』なんて無い筈なのに…

「ねえ瑞樹、さっきどうして『痛い』って言ったの?」

『学習したんです。昔、十文字さんにインストールしてもらいました』


十文字吾郎…やっぱりお前は天才だよ…

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天才が愛したアンドロイド[KAC20244] 夏目 漱一郎 @minoru_3930

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