やさぐれだったぞメロス

きつねのなにか

かんちがい

メロスはやさぐれ立っていた。

なんか最近王が遊んでくれないのだ。

そりゃあ爆破したし処刑したしポケモソカードバトルしてボコ勝ちしたし処刑したしぬいぐるみになって処刑したし処刑したし。火種は溢れるくらいあるのだが。

そんなところに妹夫婦が追い打ちで妊娠したと言って来たもんだ。やさぐれたりする。ばぶばぶー、あかちゃんまだかなー。

それなら王に会おうとして伝書鳩を飛ばす。ついでに電子メールも送っておいたし問題なかろう。


シラクサまでの道は十里ある。妹に負担はかけられない。のんびり歩こうと相成った。

メロスはやさぐれながら妹のお腹に耳を当てて心音を聞いたり、自分の肉体美を絵画だと言って妹に見せたりしていた。どう見ても後者はセクハラである。妹はいつものことだと気にもしていなかったが。

お昼頃には道も半ばを過ぎ、お昼を食べようとやさぐれながらもランチョンシートを敷いたり自作の愛情たっぷりのパンサンドを食べたりしていた。


その時である。複数の棍棒を持った男達が周りを囲んだ。


「おい、その女の腹を数回叩かせろ」

「なんだと、妹のお腹には新しい命が誕生しているのだ」

「その命がほしいのだ」


メロスは気持ちが一気にささくれ立って瞬間殺法「メロスタンバイ、OK!」を放っていた。複数の男の後ろから複数のセリヌンティウスが思い切り右ストレートを放ち、首を折った。


メロスは酷い瞬間を妹に見せたと無気力になった、つまりやさぐれてしまった。


こんな所ではご飯など食べられないと懐を確かめて小銭を稼いだ後に移動し、沈黙のメロス。さすがに陽気な気にはなれない。


しかしお昼ご飯を食べてお腹も満たしたメロス。あと少しだと歩き、この晩は山小屋に泊まった。普通こういうものは存在しているものである。あのときは急いでいたから存在を省いただけであるのだから。


その晩である。複数の棍棒を持った男達が周りを取り囲んだ


「おい、その男の頭を数回殴らせろ」

「なんだと、私を殺す気か」

「お前の命がほしいのだ」

「さては王、気が違えたか」


メロスは大技「メロリーゴーランド!!」を放った。超高速回転するメリーゴーランドの前に男達はミンチになった。

これではこの山小屋も使えない。

仕方がないのでメロスが生き返ったあの草原くさはらまで向かい、そこで毛布を妹に掛けて寝た。初夏、満天の星である。妹夫婦が良い雰囲気になったのでメロスはやさぐれ、距離を取って寝た。


さあシラクサにきたぞ。王に会ってから市を見て帰ろう。美味しい飲み物屋ズタードールで珈琲なんかを飲んでもいい。新鮮なミルクがここでは手に入る、それを入れて飲むのも格別だ。


王に会った。王はなんか考えている笑みを浮かべて私に顔を向けた。何だというのだ。


「メロスよ、貴様はずっとやさぐれるという単語を使ってきたじゃぞ」

「ああそうだ、似ている単語ささぐれるは誤用だからな」

「えっ」

「まさか王よ、ざんねーん、ささぐれるが正解でしたー! って言いたくて二度も賊を出したのではないな」


なにも喋らなくなったので吊して問うた。

正解だった。

王は処刑された。


私達人は一通りシラクサを楽しんだのち世界一の金持ちセリヌンティウスにあい、彼に馬車を出して貰って帰ったのであった。


たまには普通の話もありだなメロス。


なお、妹は一切動揺せずに全てを楽しんでいた。慣れたもんである。

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やさぐれだったぞメロス きつねのなにか @nekononanika

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