KAC20244 冒険者達の休息

久遠 れんり

予想外

 冒険者ユーリ達は、ギルドで依頼を受け、ゴブリンの巣に向かって進んでいた。


 ギルドの予想では、巣が作られたから、数が増えたのだろう。

 彼らへの依頼は明確だった。

 巣を見つけ駆除する。

 ――この辺りをゴブリンの脅威から解放する。


 そのはずだった。

 しかし、彼らとギルドの予想は外れる。


 周りを走り抜けていくゴブリン達。

 その後ろから、大きな物の気配が追いかけてくる。


 奥から突如現れたのはオーガ。

 さすがに、彼らの予想をはるかに超える存在。予想もしていない事態。

 その巨大な体躯と獰猛な眼差しは、彼らに恐怖を刻み込んだ。


「無理。無理無理無理……」


 一斉に彼らは、走り始める。


 オーガの目的は何だったのかわからない。執拗にゴブリン達を追いかけていたのでゴブリン達が何かをしたのかもしれない。


「皆いるか?」

「おう。何とかな」

 皆が集まってくる。


「ひでえ、せっかく作った槍を落としちまった」

「長いからな。森の中じゃジャマだったな」


 一山逃げ、途中に川も渡った。

 流石に大丈夫だろう。


「帰って明日、ギルドに報告だ」


 なんとか、安全な場所にたどり着いた。たぶん。だが。

 彼らは息を切らせながら、地面に腰を下ろし休憩に入る。


 心臓はまだバクバクだし、恐怖のためか、手や足が震えている。


「あれは…… オーガだったな……」

 ぽつりと、ベダレフがつぶやく。


「ああ。俺らじゃ無理だ」

「そうだな」


 そう言いながら、火を起こし野営の準備に入る。

 今から帰っても、門は閉まる。


「明日早めに出て、開門すぐに町へ入ろう」

「ああ」


 奴がふらっと森の中に入る。

「食いもん探しか?」

「ああ。ちょっと探してくる」

「難儀な奴だな。同じ物を食えば良いのに」

「まあ、好みがあるんだ」


 俺達は今の町であぶれていた人間が集まりチームを組んだ。

 そのため食い物の好みが違い、荷物がかさばる。

 熊の獣人テッドは、魚でも肉でも食う。

 兎人族ラビーは野菜ばかり。

 ヒト族の俺とベダレフは何でも食う。

 狼系のウオルフは何でも食うが肉が好き。


 そして。

「あったか? イエイイエイ」

 彼も、熊系だが一風変わっている。

「無い。背嚢にあるから携帯用のよ」

 


 ――お後がよろしいようで。

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