ささくれ

玄栖佳純

第1話 ささくれ

 ささくれって何?

 辞書で調べたら『物の先端や表面、また、つめの周辺の皮などが細かく裂けたり、めくれたりすること。また、そのもの。さかむけ。』と書いてあった。


 私は皮膚があまり強くない。

 白くてモチモチな肌だけれど、すぐに荒れたり赤くなる。


 食器を洗ったり水仕事をすると、手がボロボロになる。

 だから家事はしたくない。


 そして自分に言い聞かせる。

 私は深窓の令嬢。だから家事をしない。だから白魚のような手をしている。でも深窓の令嬢ではないから家事はしなければならない。だから白魚のような手とはかけ離れている。


 白魚のような手って、どんな手?

 白魚って、シラスみたいな? 綺麗か? 白って付けば、綺麗に思えるから? 白は良い黒は悪いって先入観ではないか。けれどそういうイメージはある。


 イメージからすると、ささくれは『痛い』。

 手があれると爪のところまで切れて痛い。それはそれは痛い。めくれた皮膚が何かにぶつかるとびくっとするくらい痛い。だから爪切りでめくれた皮膚を切る。


 自分で自分の皮膚を切るのはちょっと怖い。けれどそうすると痛くなくなる。あとハンドクリームを塗ったりすれば多少は良くなる。良くなるけれど、それで水仕事をしようものならまた荒れる。荒れるとまた痛くなる。


 指の周辺だけではない。物の先端や表面が細かく裂けることがささくれらしい。ささくれた表面の木に触れると、破片が皮膚に入り込んだりして痛い。この痛みを取るには小さな木の破片を皮膚から取り除かなければならない。


 ピンセットなどで取れればよいが、取れないと針で刺して皮膚を傷つけて取り除く。痛いけれど取らないと痛痒い。取り除くまで痛い。いつかは皮膚から出てくるらしいが待てない。


 痛くなると心がささくれる。

 小さな痛みが重なると、気持ちも細かく裂けるのだろう。


『ささくれ』はあまりよい言葉ではないのかもしれない。痛いイメージだ。

 とりあえず、今日はハンドクリームを塗って寝よう。


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ささくれ 玄栖佳純 @casumi_cross

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