箱だらけの国

にゃべ♪

その国には箱があった

 その国には箱があった。とにかくあちこちに箱があった。箱がゲシュタルト崩壊するくらい箱があった。目につく場所の箱のほとんどが開けられていて、中に入っていたはずの物は持ち去られた後だった。


 この無数の箱は全てある男が1人で生み出したもの。その男が授かった能力だ。男が生み出した箱の中には必ず何かが入っている。住民は箱を見つけると我先にと開けて中の物を持ち去っていた。

 入っている物の大半は、テッシュとか、ボールペンとか、ノートみたいな他愛もない物。けれど、10個に1個くらいの割合で、タオルとか、いいお菓子とか、せっけんとか、コップとかが入っていたりする。


 男は箱を生み出すのものの、中身には興味がなかった。息を吸うように箱を生み出せるので、成長するに従って興味を失くしていったのだ。

 箱の中の物は100個に1個の割合で、もっと良いタオルとか、もっと良いお菓子とか、キッチンセットとか、お皿とかが入っていた。1000個に1個まで来ると、高級食材とか、高級肉とか、高級アイスとかが入っているらしい。


 それ以上のレア賞品があるかどうかは、飽くまでも噂レベルのものになる。今までの法則に従えば、10000個に1個の割合で旅行券とか、魔導書とかが入った箱がある事になるのだとか。そればかりか、もっと低確率で更にとんでもない物が入っている箱があると言う話も――。

 実際、男が生み出した箱の数は10万個とも20万個ともそれ以上とも言われていて、正確に数えた資料は存在しない。そして、可能性だけならどの未開封の箱にも存在するのだ。そんなレアアイテムが入った箱は存在しないと言う可能性も含めて。


 箱は男が放浪した証。それだけ国中を巡って箱を生み出してきた。男が生涯を終えた後も、どこかに未開封の箱があるのだと言う噂だけが独り歩きをする。

 いつの間にか国中に現れた箱ハンター達は、伝説の完璧で究極なアイテムを求めて今も箱を探し続けている。

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