シ箱

まれ

シ箱

 みなさんは”箱”と聞いて何を思い浮かべますか?


 宝箱?びっくり箱?おもちゃ箱?ゴミ箱?はたまたダンボール箱?


 この世界にはいろんな”箱”があります。


 といっても、です。


 ものを入れるための入れ物のことを”箱”と我々は呼びます。


 お宝が入っていれば宝箱。


 人をびっくりさせるための箱、びっくり箱。


 おもちゃをしまっておくための箱、おもちゃ箱。


 ゴミを入れて、一定期間保管しておくための箱、ゴミ箱。


 ダンボールという特殊な構造をもつ素材で作られた箱、ダンボール箱。


 これらは誰がどんなふうに名前をつけたのでしょうか?


 答えは調べればすぐにでもわかるでしょう。


 でも、今はいつのまにか当たり前のように知っていて、使っている。


 みんな知っていて、そう呼んでいる。


 じゃあ、他のいろんなものを箱の中に入れれば呼び方は変わるのだろうか。


 おそらく、のままだ。


 でも、より何が入っているかわかりやすく簡潔に表現されたなら、変わるだろう。


 そして、より多くの人に認知され、話題になり、広がっていけば、定着するだろう。


 定着し、何十年も経てば世代が変わり、そこに付随したストーリーは忘れ去られる。


 何が言いたいのか。


 最初にあげた例の呼び名はすべて、多くの人に同じものを正しく想像してもらうための表現の結果なのだ。


 つまり、どれもただの”箱”。


 誰が何かを入れ、それをわかりやすく想像してもらうための。


 では、ここでいろんなものを入れてその箱を名付けてみようではないか。


 本を入れた箱、本箱。


 すでにありそうですね。


 ゲーム機やソフトなんかを入れた箱、ゲーム箱。


 なんか語呂悪い?


 掃除道具を入れておく箱、掃除箱。


 掃除ロッカーかな。


 趣味のものだけを入れておく箱、趣味箱。


 広すぎて逆になさそうだけど、結構言いにくい。

 噛みそう。


 お酒を入れておく箱、酒箱。


 あるんだろうなこういうのは。


 希望とか形のないものはどうだろうか。


 希望箱になるのかな。


 愛を入れた箱、愛箱。


 それ以前にどうやって形のないものを箱に入れるんだよっていうツッコミがある。(多分)


 やはり、我々には形のあるもののほうが良いことが今のでわかった。


 標本って虫などの動植物が入っているけど、なぜか虫箱とか言わないよね。

(言うかもしれないけど)


 犬を入れた箱、犬箱。


 猫を入れた箱、猫箱。


 鳥を入れた箱、鳥箱。


 どこからか訴えられそう。


 血を入れた箱、血箱。


 歯を入れた箱、歯箱。


 目を入れた箱、目箱。


 骨を入れた箱、骨箱。


 肉を入れた箱、肉箱。


 指を入れた箱、指箱。


 死体をいれた箱、死体箱?いや、死箱。



 これは、約一年前の話だ。

 とあるお店があった。

 外見では何屋さんかはわからない。

 周りにお店はなく、家ばかり。

 連日、老若男女問わず人が溢れている。


 お店のホームページを見ていると、いろんな種類のお肉を取り扱っているようだった。

 熊や鹿などのジビエから、カエルやらウツボなど普段食べない食材を扱っているらしい。


 レビューを見てみると評判が良く、味も美味しく安い。

 おまけに店員さんも美人。

 という書き込みがあった。


 そして、何枚かお店の写真もあった。

 極々普通の一軒家という感じで一階を改装したような店構えをしていた。

 表には看板がありそこには、

『1日限定10食!!』と書かれていた。

 どうやら、限定メニューがあるらしい。


 他の見てみる。

 だいたいは同じような写真。

 店員さんがテレビの取材を受けたときの切り抜き写真もあった。

 そして一枚だけ、気になる写真があった。

 それはお店の横からの写真で、小さくなっていてぼやけているが決してキレイではない箱が映っていた。

 あれはなんだろうか。

 まあ、汚いというか汚れているからきっと捌いた動物の死体とか入れてあるんだろうな。

 そう思った。


 この箱はシ箱と名付けようと思う。

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シ箱 まれ @mare9887

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