【KAC20243】ご意見箱への投書は真面目にお願いします!

尾岡れき

音無ちゃんと瑛真ちゃん

 生徒会執行部へのご意見箱、通称――【目安箱】

 その前にどうして私がいるのか、分からない。


「文芸部の瑛真えまちゃんなら、お返事の代筆、適任ですね?」


 にっこり笑って言うのは、副会長の音無おとなしちゃん。この学校では目安箱に書かれた意見は、生徒会執行部が直筆で返書を出すことになっていた。


「字なら、音無ちゃんの方が上手いじゃん」

「書道四段ですから。書くと嫌味と捉える人もいるかと」

「私なら良いんかい!」


 だいたいこう言うのは生徒会役員が――。


 そうボソリと呟けば、音無ちゃんの相貌からハイライトが消える。あぁ、そうだった。能無し役員たちに、苦労している副会長。まぁ、たまには助けてやっても良いかと、私はペンを手に取った。



🙋‍


――高校デビューに失敗しました。どうしたら良いでのしょうか?


「知らんし」

「瑛真ちゃん、それじゃお答えになっていません。そうですね、高校デビューという言葉が、そもそも不思議な言霊かと。皆さん、晴れて入学されてますからね。高校で何かチャレンジしたいと思われたのなら、それは今からでも遅くないって思いますけどね」


🙋


――ハーレムを作りたいのですが、縁がありません😢


「……いや、こんな質問を読む私が泣きたいけど?」

「そうですね……なぜ、ハーレムが良いのでしょうか?」

「男性のロマン? 知らんけど」

「質問者の方はハーレムを作るほどのお力があるのでしょうか? 私としては真実の愛を探すことをおすすめしますけどね」


🙋


――幼馴染はどこにいますか?


「知らんわ!」

「そもそも朝起こして、お弁当作ってくれて、勉強も見てくれる幼馴染なんているワケないですよね?」


🍵


「全然、生徒会の運営と関係なくない?」

「毎年、1、2通……真面目なものがあるんですけどね」

「あと、何通あるの?」

「87通ですね。大丈夫、今年は瑛真ちゃんがお返事書いてくれるから、助かってます!」







「ご意見箱への投書は、真面目にお願い!」

 それは、心からの私の叫びだった。

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