3級凍結魔法による食肉の保存に関する調査

バルバルさん

1730年、ピエール・サコンの論文

〇はじめに

昨今、国民の生活に限らず旅人や冒険者、傭兵や軍部にとって食品の保存は兵站などの観点から重要な物であった。

基本、食品は腐敗する物である。そのプロセスについては様々な学説があったが、近年はバッフ・ポップ博士の「微生物腐敗プロセス論」やボロン・プッティ博士の「酵素腐敗論」が主流である。この論文ではこの二つの論を前提に話を進める。

微生物腐敗論において、食品が腐敗するのは微生物という極小の生命体によるものであるとされ、酵素腐敗論では食品内の酵素と呼ばれる物質が起こす現象であるとされる。この二つの論において、食品の腐敗に必要な要素とされているのが水分の存在だ。

水分とは食品が含有する水の事。古くより人類などは食品の水分を抜くことで食品を保存をしてきた。その方法としては、天日干し、炎による乾燥、塩漬などによる脱水である。

だが、これらの方法には時間がかかるという欠点がある。なので、緊急時の保存食品生産には向いていない。

しかし、なぜ食品内の水分が腐敗に関係しているのだろうかと考えた時、水分は流体でありその内部を部生物や酵素などが移動するからであると論じることができるが、ならば水分を固体にすればその内部を物質や生物は移動できず、腐敗を防止できるのではないか。

水分を固体にする方法は、極低温にする方法があるが、一般の設備では難しい。なので、魔法を使用してはどうかと私は考えた。

凍結魔法とは1から3級まである攻撃魔法に分類される魔法だ。効果としては、ターゲット物体の温度を急激に下げ、凍傷、あるいは凍結により行動不能にするものだ。

そう、この魔法を使えば食品内の水分を凍結させることができるのではないか。

今回、魔法の効果範囲や使用難易度を考慮して、3級魔法に絞って効果を検証した。


〇実験

 今回使用したのは牛肉、豚肉、鶏肉である。これらの肉を10セルト四方に切り分け、それに凍結魔法をかけた。

魔法使用後にこれらの肉は凍結した。凍結魔法の実質効果時間は3時間。それ以降になると凍結効果が切れるので、3時おきに凍結魔法をかけた。

また、サンプルとして凍結していない肉も用意しておく。

これを完全密閉し室温で固定した部屋で一週間置く。

 また、一週間後、通常肉、干し肉、凍結肉で食試験を行い、味の変化を調べる。


〇結果

凍結魔法をかけた肉三種において、外観からわかる腐敗は認められなかった。

サンプルの肉は変色や腐敗臭のする肉汁の漏れなどが確認できた。

凍結肉を焼いて食してみたところ、通常の肉をそのまま焼いた物よりは食感、味ともに落ちるものの、干し肉よりは美味しいというアンケート結果が出た。

ただし、魔法職に定期的に魔法をかけさせたことによるストレスなどが認められた。


〇終わりに

3級凍結魔法によって肉を保存はできることがわかった。だが、これを兵站利用するには定期的に魔法をかけなければならないことから専門の魔法職を必要とする、あるいは交代制にすることが必要だろう。

また、今回は室温や魔法をかける頻度を固定したが、温度の変化、凍結魔法の頻度など、まだ研究すべき内容は多い。

だが、この研究が凍結魔法の食品保存に関する研究のきっかけになれば幸いだ。

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