第14話 ひとりはみんな、いやだよね

 パーティーの日は特別。まして今日は、モニカ自身の誕生日。

 夜更かしも許されるが、それでももうそろそろおネム。


「モニカ、一人で寝られる?」

「もう5たいでつ! 寝られるのでつ!!」


 そう、今日からモニカは一人でおやすみ。

 部屋も用意された。それこそ誕生日プレゼントの最たるものか。


「怖かったらいいなさいね。また一緒に寝てあげるから」

「だいじょうぶなのでつっ!」


 姉リジェルのからかいに、むきになるのはネムネムでご機嫌ななめだからかも。


 広い部屋だが、ベッドは小さい。

 レースの天蓋キャノピーに守られて、雲に沈み込むようなふかふかのお布団。寂しくないようにと、お友だちのぬいぐるみはいっぱい。モニカに似合いのかわいらしい、まるで天使に抱かれているようなベッドだ。


 プレゼントの山はすでに運び込まれていた。

 眠い目をこすりつつ、ベッドにもぐりこむより先に、モニカはその山をごそごそとさぐり出す。さっそく何が贈られたか見てみたいのだろうか。


「あったでつ!」


 取り出したのは、あの箱であった。


「うーん……」


 カギはかかっている。

 それはモニカにも分かっているはずだ。

 しかし、「カチリ」と音が鳴り、箱は簡単に開いた。

 なかから小さな鳥が飛び出して、モニカの部屋を飛び回る。


 モニカ、それを無視して、トコトコと窓に歩いて行けば「ぅんしょ……」と、手を伸ばして窓を開けた。もちろん小さなモニカが落ちてしまわないよう、窓は少ししか開かない。


「とりたん、いっていいでつよ」


 小鳥が一羽、抜け出せるほどの隙間は十分できる。


「とりたん、とりたん、いってくだたい! みんなのところへお帰りなのでつ!!」


 モニカ、部屋のなかでもがくようにくるくる回る鳥に、懸命に話しかける。

 するとようやく話が通じたのか、鳥はするりと窓から自由の大空へと飛び立って行った。


「これでいいのでつ」


 モニカ、満足すると真新しいベッドのなかへ。


「とりたんもみんなと一緒にぬくぬくしているといいでつねえ……」




▼▼▼


「独りは嫌か……。あんな小っちゃい子でも、いやそやさかいにか? 分かっとるんやなあ。優しい子や」


 窓の下。


 ケルスである。

 事の成り行き、どうやら察するところあり、ひそかに見守っていたようだ。

 穏やかな顔である。

 ケルス、きびすを返した。


「けったいな姫さんやけど、おもろい子や。ま、もう少し付きうたるわ」


 ケルスもまた、地下牢とは名ばかりの寝床へと戻っていくのである。




▼▼▼


「そうしてもらえると、わたしもいろいろ安心。面倒事もいやだしぃ」


 空の上。


 空飛ぶほうきを乗りこなし、夜闇に溶け込み見張っていた、妹思いなリジェルが微笑む。


「やあっと、あの子のお守りから解放されるわ。適任ってか、これ以上ないのを付けられたし」


 今宵満月。

 まるでそれを目指すように、魔鳥は飛び去って行く。


「バイバイ。もう捕まらないでね」


 と、それさえにこやかに見送れば、


「ふぁああ」


 大きなあくびである。


「疲れた。私ももう寝よっと」


 夜は更けて、みんなおやすみなさい。


【おわり】

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モニカとビックリ箱、なにが入っているのかな? ~幼女、伝説の大魔獣ケルベロスと出会う~ @t-Arigatou

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