第13話
ハッピーバースデー!
モニカ姫!!
交響楽団のファンファーレが大広間に響き渡る。
ヘイエルが仕込んでいた大仕掛けだ。
楽団の指揮を執るのもヘイエル。
様になっているのはさすがといえよう。
城中が幸せに包まれるような盛大な祝いであった。
お城のすべての人間が、モニカの5歳の誕生日を祝福である。
お披露目はまだゆえ、城下の人々はモニカの顔姿を知らないが、それでも今日が末の姫様の誕生日であることは知れ渡っている。王都をあげての賑やかなお祭りになっていた。
「みなたん、ありがとうでつ」
モニカ、満面の笑みである。
うれしそうで、楽しそうで、見ているこちらこそ幸せになる、そんな天使の笑顔を振りまいている。
モニカとしては、そんな皆の顔を見るのが何よりうれしいのだ。みんなが楽しければ、笑っていれば、自分も楽しいし、笑顔になる。それがモニカなのである。
プレゼントの箱が次々とモニカの前に置かれていく。
それがどんどん山となる。
モニカ、何故かキョロキョロ。
「どうした? モニカや?」
父王が心配げに小さなモニカを抱き上げた。
「ヘイエルを捜しているのかい?」
「ちがうのでつ」
妹を溺愛する兄ヘイエルが聞いたら卒倒しそうな冷たいモニカである。
ヘイエルは席を外していた。妹のためのパーティーとはいえ、大事な社交の場でもある。歯がゆくも王太子、あいさつ回りに忙殺されていたのだが、それもこのさい幸いだったかもしれない。
「ないのでつ」
「何がだい?」
「ビックリ箱……」
「ビックリ……。とは?」
「モニカ、見たのでつ。あれが欲しいのでつ」
一生懸命、モニカは説明する。
薄暗い部屋に置かれていた箱のことを。
なかから何が飛び出してきたか、それはいわない。子ども心にもタブーは分かっているのだろう。ただ、あれが欲しい、あれが欲しい! と、駄々をこねるばかりである。
困ったのは父王ほか、側近たちである。
それは魔界から迷い込んできたもの。扱いに困るところあり、とりあえずと封印されていたものである。その箱をどうしてモニカが知っているのか。拙い言葉足らずな説明では分からないが、大事な姫君におもちゃと与えていいものではない。
「いいではないですか」
そういったのは、リジェルであった。
父王の前に進み出れば、皆の前でもある、しゃなりと立派な姫を演じるかのように落ち着いた声でいう。
「モニカが何故それをはともかく、今日はお誕生日、少しのわがままくらい許してあげましょう」
そういいつつ、父王にだけ、そっと耳打ち。
『言い出したらキリがない子だから。ここはね、渡しといて、おとなしくさせましょ。せっかくのパーティーが台無しになるのは嫌だし。どうせすぐ飽きるだろうから、そのときそっと取り上げればいいから。なんなら、その役、わたしがやってもいいし』
その言葉で父王も納得、すぐに箱を取ってこさせた。
「これでつ! とおたま、ありがとうございまつ」
見よう見まねの礼式
緊張感が走っていた会場がまた
「さあ、パーティーの続きをしよう。楽団、いっそう楽しい音楽を頼む」
王の声と共に、楽団がリズミカルな音楽を奏で始めた。
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