本屋にてパート2『絶対結ばれる指輪』

三雲貴生

一話完結

 彼女に浮気がバレた。


 避難先は以前『命の危機を』という予言の書を買った本屋だ。店長は、趣味の悪い緑のエプロンをして俺の話を聞いてくれた。


「『予言の書』が有るのになんで回避出来なかったんですか?」


「イヤなんか言うことがムカツイてつい言い返してしまった」


 別れ話をする彼女についカッとなって言い返してしまった。後悔はしている。彼女と別れたかった訳では無い。


「良い掘り出し物がありますよ?」


 店長は、奥の骨董品コーナーから小さな木のケースを取り出した。箱の表面には『Pandora』と書かれていた。


「パン──なに?」


「ギリシャ語で贈り物の意味です」


「ああ、プレゼントの意味か?」


「この中には、あなたの望む物が入っています」


「婚約指輪か?」


「あなたがソレをお望みならね?」


「だったら彼女と『絶対結ばれる指輪』が欲しい!」


「毎度あり」


 買ってしまった。こんな箱に30万て高すぎただろうか? だが、前の『予言の書』も結局役にたった。


 早速、彼女ののこに連絡して、いつもの喫茶店に呼び出した。


「はあ? 30万? 返して来なさい!!」


 いきなりバレて怒られた。


「いやだって、給料の3ヶ月分って言うだろ?」


「ソレは結婚指輪でしよ! え? 結婚指輪なの? ウソッ」


 ふたりで指輪をはめ合った。

 箱の効果か? 指輪の魅力か? 彼女と直ぐに仲直り出来てしまった。

 箱から取り出したソレは俺の望んだ通りのダイヤの指輪だった。


「箱から煙が出た時はちょっとビックリしたけど、このダイヤの指輪だと30万ではないわ。もっと良いものだわ!」


「じゃあ結婚してくれますか?」


「いや待って、ああでも、ハメちゃったし──指輪は綺麗だし。悩むわ──」


 彼女が悩んでいる間に箱から溢れ出た、目に見えない厄災が世界に広まった。


 最初に、人を食うバッタが大陸を渡って来たとニュースが報道し始めた。

 

 コンクリートを食い荒らす白アリが人の住処すみかを奪った。

 

 風邪の流行性を持っ癌が流行すると、コレはマズイのではないか? と人々は囁き始めた。

 

 隣に座っていた人間を殺さないといけない怪しげな宗教が流行り。

 

 地震・津波・寒気が追い打ちをかけた。


 月が割れて隕石が降り初め、ついに人類は絶滅した。

 

 ふたりを残して……。


 月からの流れ星を眺めながら、ついに彼女は観念した。 

 

「こうなったら仕方ないわ。私、あなたと結婚するわ」


 こうして、全ての厄災を周囲に振り蒔いて俺達は結婚した。


 この先どんな試練が待ち受けようとも、別れることはないだろう。なんたって、浮気相手がいないのだから……。


(世界の)おわり

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本屋にてパート2『絶対結ばれる指輪』 三雲貴生 @mikumotakao

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