敏腕エージェントの日常3
信仙夜祭
今日は、機密情報の奪還か~
「ふう……。今回の住宅設計は、こんなもんでいいかな?」
俺は、敏腕エージェントだ。今は、敵国に潜入し様々な活動を行っている。
今は身分を保証するために、表向きは建築会社を立ち上げて、デザイン業務を熟している最中だ。
これは、母国から資材を輸入させて、母国の輸出量を上げる打算もあった。
母国からは、『景気が良くなっているので、そのまま続けるように』だそうだ。
この敏腕エージェントをなんだと思っているのか……。
それと、もう一年近くになるが、仕事が来ない。
建築業に専念しろと言うことだろうか?
政府高官の家に潜入するミッションは、どうなったんだ?
音沙汰もなくなっているんだが?
「もう建てた建築物は、100棟にもなるんだな……」
もうね、母国からいっぱい人を呼んで、建て続けている。
どいつが土木作業員で、誰がエージェントかもわからない。まあ、母国のコマンダーが上手く紛れ込ませているんだろう。
俺もそろそろ、諜報活動とかしたいけど、尻尾を掴ませるわけにもいかない。
もうしばらくは、建築会社社長を装って行こう。
そんなことを考えている時だった。
通信が入った。
「え~と、なになに……」
『敏腕エージェント、仕事だ。我が国の機密情報が盗まれた。だが幸いにも、敏腕エージェントの会社の資材に紛れ込ませたことが分かった。君は明日到着する荷物から、機密情報を抜き出してくれ。頼む、国家存亡に関わる内容だ』
久々の任務が来たか。
だが、機密情報とはなんなのだ?
◇
朝になり、平凡エージェントが暗号文を渡して来た。
資材は、昼には到着する。
奪い取れるとすれば、一瞬しかない。
目標のモノの形だけでも事前に調べていないと、俊敏に動けない。暗号文から形を確認して行く。
「……箱? 形は箱なのか? 大きさは、A4の紙が入るくらい?」
木材で作られた、箱の奪還?
資材が届いた。
注文した量とあっているか、確認作業を行う。
俺は現場監督者だ。部下に指示を行い、確認作業を行わせる。
その間に、箱の捜索だ。
(ない、ない、ない……)
コンテナ一箱分だが、何処を探してもない。
もしかして、隠されている?
「社長~。何処ですか?」
まずい、もう時間もないみたいだ。
どうする? 諦めるか?
だが、これ以上の捜索を行うと、疑われてしまうかもしれない。
俺は、移動した。
「数はあっていたか?」
「それでなのですが、リストにないモノが混ざっていました。これになります。如何なさいますか?」
――ピク
女性作業員が、箱を出して来た。
箱を受け取る。把手が付いていて、鞄にも見えるな。
「これは……、私が預かろう。異国間での取引きなんだ。要らぬ波風を立たせたくない。母国側の建築会社に問い合わせてみるよ」
「承知しました」
その後、資材の出発を見送った。
自宅に戻り、地下室へと移動する。
「危ね~。でも結果オーライだよね」
俺は、回収した箱を解体し始めた。カギがかかっているかと思ったけど、開かない仕様のようだ。
なにが入っているのか……。
「……母国の汚職の証拠じゃん」
これは……ヤバいな。敵国とも繋がっているじゃん。
税金をなんに使っているのか。
ここで、通信が入った。
「え~と、なになに……」
『敏腕エージェント。依頼の品は見つかったか? 中を開けずに返却するように。見つからなかった場合は、潜入捜査を依頼する。最悪、コンテナを爆破させてもいい』
ダメだね。母国も終わっているよ。
それと、こっちからは通信ができないんだよね。一方通行なんだ。
「さて……。どうするか」
◇
数日後、敵国の官僚が逮捕された。
俺の母国も騒然だ。俺は、珈琲を飲みながら、新聞とテレビを眺めている。
「ちょっと改ざんして、新聞社にリークしたけど、大問題に発展してんだな……」
母国もダメージを受けている。
コマンダーからは、通信が入っていない。母国側も混乱してんだろう。
なんせ、俺たちの上司が捕まっているんだし。
でもね、汚職はダメだよね。そんな人の下では、働きたくない。
俺は、箱を組み立て直して、リビングに置いた。インテリアに良いだろう。
だけど、もうちょっと嫌がらせしようか。
俺は、箱を量産して販売を行った。色々なモノを仕舞える万能箱として売り出したのだ。
しかも汚れたら簡単に廃棄できる。使い捨て用だ。
釘は使わずに、木組みだけで組み立てられる仕様としたのだ。
これは……、バカ売れした。
「ふっ、またしてもヒット商品を生み出してしまったか。自分のセンスが怖いぜ……」
母国からは抗議が来たが、母国でも売り出すと、これまたバカ売れした。
資金は、そのまま組織のお金になるので、途中からなにも言って来なくなった。
それと、箱を見た官僚が、青くなっていたんだそうだ。
あの箱は、裏の文書を運ぶ意味合いも含まれていたらしい。
今後、後ろめたい文章は、他の輸送方法に変わるんだろうな。
今後は、透明な政治を行って欲しいモノだ。
「さて……。今日も働くか」
◇
こうして、今日もこの国の平和が護られた。
敏腕エージェントの活躍は、終わらない。
終わりが見えない戦いは、今後も続いて行く――かもしれない。
敏腕エージェントの日常3 信仙夜祭 @tomi1070
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