敏腕エージェントの日常3

信仙夜祭

今日は、機密情報の奪還か~

「ふう……。今回の住宅設計は、こんなもんでいいかな?」


 俺は、敏腕エージェントだ。今は、敵国に潜入し様々な活動を行っている。

 今は身分を保証するために、表向きは建築会社を立ち上げて、デザイン業務を熟している最中だ。

 これは、母国から資材を輸入させて、母国の輸出量を上げる打算もあった。


 母国からは、『景気が良くなっているので、そのまま続けるように』だそうだ。

 この敏腕エージェントをなんだと思っているのか……。

 それと、もう一年近くになるが、仕事が来ない。

 建築業に専念しろと言うことだろうか?

 政府高官の家に潜入するミッションは、どうなったんだ?

 音沙汰もなくなっているんだが?


「もう建てた建築物は、100棟にもなるんだな……」


 もうね、母国からいっぱい人を呼んで、建て続けている。

 どいつが土木作業員で、誰がエージェントかもわからない。まあ、母国のコマンダーが上手く紛れ込ませているんだろう。

 俺もそろそろ、諜報活動とかしたいけど、尻尾を掴ませるわけにもいかない。

 もうしばらくは、建築会社社長を装って行こう。


 そんなことを考えている時だった。

 通信が入った。


「え~と、なになに……」


『敏腕エージェント、仕事だ。我が国の機密情報が盗まれた。だが幸いにも、敏腕エージェントの会社の資材に紛れ込ませたことが分かった。君は明日到着する荷物から、機密情報を抜き出してくれ。頼む、国家存亡に関わる内容だ』


 久々の任務が来たか。

 だが、機密情報とはなんなのだ?





 朝になり、平凡エージェントが暗号文を渡して来た。

 資材は、昼には到着する。

 奪い取れるとすれば、一瞬しかない。


 目標のモノの形だけでも事前に調べていないと、俊敏に動けない。暗号文から形を確認して行く。


「……箱? 形は箱なのか? 大きさは、A4の紙が入るくらい?」


 木材で作られた、箱の奪還?



 資材が届いた。

 注文した量とあっているか、確認作業を行う。

 俺は現場監督者だ。部下に指示を行い、確認作業を行わせる。

 その間に、箱の捜索だ。


(ない、ない、ない……)


 コンテナ一箱分だが、何処を探してもない。

 もしかして、隠されている?


「社長~。何処ですか?」


 まずい、もう時間もないみたいだ。

 どうする? 諦めるか?

 だが、これ以上の捜索を行うと、疑われてしまうかもしれない。

 俺は、移動した。


「数はあっていたか?」


「それでなのですが、リストにないモノが混ざっていました。これになります。如何なさいますか?」


 ――ピク


 女性作業員が、箱を出して来た。

 箱を受け取る。把手が付いていて、鞄にも見えるな。


「これは……、私が預かろう。異国間での取引きなんだ。要らぬ波風を立たせたくない。母国側の建築会社に問い合わせてみるよ」


「承知しました」


 その後、資材の出発を見送った。



 自宅に戻り、地下室へと移動する。


「危ね~。でも結果オーライだよね」


 俺は、回収した箱を解体し始めた。カギがかかっているかと思ったけど、開かない仕様のようだ。

 なにが入っているのか……。


「……母国の汚職の証拠じゃん」


 これは……ヤバいな。敵国とも繋がっているじゃん。

 税金をなんに使っているのか。


 ここで、通信が入った。


「え~と、なになに……」


『敏腕エージェント。依頼の品は見つかったか? 中を開けずに返却するように。見つからなかった場合は、潜入捜査を依頼する。最悪、コンテナを爆破させてもいい』


 ダメだね。母国も終わっているよ。

 それと、こっちからは通信ができないんだよね。一方通行なんだ。


「さて……。どうするか」





 数日後、敵国の官僚が逮捕された。

 俺の母国も騒然だ。俺は、珈琲を飲みながら、新聞とテレビを眺めている。


「ちょっと改ざんして、新聞社にリークしたけど、大問題に発展してんだな……」


 母国もダメージを受けている。

 コマンダーからは、通信が入っていない。母国側も混乱してんだろう。

 なんせ、俺たちの上司が捕まっているんだし。

 でもね、汚職はダメだよね。そんな人の下では、働きたくない。


 俺は、箱を組み立て直して、リビングに置いた。インテリアに良いだろう。

 だけど、もうちょっと嫌がらせしようか。


 俺は、箱を量産して販売を行った。色々なモノを仕舞える万能箱として売り出したのだ。

 しかも汚れたら簡単に廃棄できる。使い捨て用だ。

 釘は使わずに、木組みだけで組み立てられる仕様としたのだ。


 これは……、バカ売れした。


「ふっ、またしてもヒット商品を生み出してしまったか。自分のセンスが怖いぜ……」


 母国からは抗議が来たが、母国でも売り出すと、これまたバカ売れした。

 資金は、そのまま組織のお金になるので、途中からなにも言って来なくなった。

 それと、箱を見た官僚が、青くなっていたんだそうだ。

 あの箱は、裏の文書を運ぶ意味合いも含まれていたらしい。

 今後、後ろめたい文章は、他の輸送方法に変わるんだろうな。


 今後は、透明な政治を行って欲しいモノだ。


「さて……。今日も働くか」





 こうして、今日もこの国の平和が護られた。

 敏腕エージェントの活躍は、終わらない。

 終わりが見えない戦いは、今後も続いて行く――かもしれない。

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