【KAC20243】箱の中身とか正直死ぬほどどうでもいい。

姫川翡翠

東藤と村瀬と「箱の中身はなんだろな」

「え、なにこれ」

「箱やけど」

「そんなもん見ればわかるわ」

「じゃあ聞くなよ」

「そうじゃなくて、なんで僕がトイレ行ってる間に急にこんなん机の上に置いてんのかって」

「それはもちろん!」

「嫌なんやけd「第3回! 箱の中身はなんだろな!?」

「食い気味にくんなよ! やっぱりか!」

「えー、今回も挑戦者の村瀬さんには箱の中身を当ててもらいます」

「なんか今日デカイ荷物持ってんなぁって思ったんよな」

「中身を当てれば賞金100万です」

「単位は?」

「ドルです」

「ええんか? いま円安やのに?」

「円より高いのにか?」

「やかましいわ。そもそも円でも無理やろ」

「じゃあリットル」

「何を?」

「血液」

「昨日大量虐殺でもしてきたんか?」

「実は蚊を……」

「蚊が吸った分から100万リットル!? きっっっっっっっっしょ」

「じゃあ100万個の水分子を差し上げます」

「それってどのぐらいになるん?」

「理系じゃないんでわかんないです」

「あっそう。別になんでもええけど」

「どうせ当たらへんしな」

「お前がめちゃくちゃなもん持ってくるからやろ」

「言うほどか?」

「初回は白湯、2回目ははっさくやぞ。当たるわけないやろ。そんなんふつうあり得へんねん。『箱の中身はなんだろな』って触る瞬間にドキドキするもんでそのリアクションを楽しむもんなんよ。そんでそのドキドキさえ乗り越えて触ればちゃんとわかるもんなんよ。白湯? わかるかいそんなもん一回沸騰させてようと常温の時点でもはやただの水やろ。せこいわ。そんではっさくも無理や。柑橘系とか最悪やろ。一般人は視覚と嗅覚を駆使してすら簡単にはわからんのに触覚だけてわかるわけないやろ。梨と林檎ですら怪しいっちゅうねん」

「ちょっとツッコミ長いわ」

「黙れ。僕には文句を言う権利があるはずや。みかんで正解でええやんけ」

「柑橘系の農家さんに怒られんで?」

「そんなん知らん。東藤が悪い」

「じゃあ早速どうぞ」

「……はぁ」

「どう?」

「ん? 何も入って無くない?」

「いやいやそんなことないよ」

「えぇ? うそ?」

「ちょっと貸して。……うん、ちゃんと入ってるで」

「なんもないけど」

「常識的に考えてなんもないことないやろお前」

「…………あ。ああ!」

「なに急に」

「わかった。今日は絶対勝ったぞ」

「ほう?」

「東藤。お前今日はヒント出し過ぎたな。ひとつ、100万個の水。ひとつ、常識的に考えて『何もない』ということはない、つまり「何もない」ということはであるということ」

「……!」

「そう、僕ら人間には触れられないが、箱の中にも当然窒素分子や酸素分子、すなわち『空気』はある! 答えは『空気』や!」

「……ファイナルアンサー?」

「窒素とか酸素とかそういう細かいのは無しやからな?」

「…………ファイナルアンサー?」

「こいよ」

「残念」

「おい。もっと溜めろよ。醍醐味やろ」

「違うわバーカ」

「くっそー! むかつくー!」

「正解は……よいしょ」

「え、なんもないやん」

「いやいや。ほら」

「え、底見せられても、何? どういうこと?」

「正解は、箱でした!」

「は? どういうこと?」

「外箱にピッタリのサイズの箱を中に入れて、手を入れるところだけくりぬいておいた。要するにマトリョーシカ見たいになってる。まあヒント出し過ぎはそうやな。箱の中ちゃんと触ったら内と外で明らかに材質違うし、底抜けの外箱と違って内箱はちゃんと『箱』やから、底の方を触れば机じゃないし。はい箱どうぞ」

「…………」

「はいお前の負けぇ!」

「…………」

「あとに考えるなら『空気』は『』やろ」

「……もう二度とやらんわ」

「次回にご期待ください」

「やらん言うてるやろ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【KAC20243】箱の中身とか正直死ぬほどどうでもいい。 姫川翡翠 @wataru-0919

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ