第2話 書き始めてから1週間目

お話を書き始めた次の日。


とみきは起きて顔を洗い、歯を磨きながらパソコンを見た。

朝食を食べている時もパソコンを見つめていた。


続き…


皿を片付け、洗い物をしてごく普通にパソコンの前に座り電源を入れた事にとみき自身が驚いた。


続きを書くのか…まぁ、自分自身が続き、気になるもんな…。


アルゼンチンの片田舎の修道院に隠されていた棺の中の吸血鬼?

何故日本語を話したのか?

生贄の処女の乙女?はどうなるのか?


昨日と同じ、パソコンの前に座るまではノープラン。

いざ書き始めるとすらすらと続きが出て来た。


長編を何度か書いた事はあるけれど、こんな事は今まで経験が無かった。

主人公たちの言葉や疑問がすらすら出てくる。


裏に別のタスクを立ち上げ、年代などを調べ、その疑問の答えを書く参考にしながら話は進んで行った。


その翌日も、その翌日も、決まりきった朝のルーティンの様に朝食後に話を書き進めた。

ストーリーの進行には全く困らなかった。

棺から蘇った吸血鬼、マイケル・四郎衛門という名前その名前さえすらすらと出た。

彩斗と生贄の乙女がよみがえった吸血鬼に食い殺されなかった事にホッとしながら、自分自身が吸血鬼の真の姿に驚き、四郎が吸血鬼となるくだりを書きながら、へぇ~!そうなんだ!と声を出してしまった。


こうして、小説執筆はごく当たり前の習慣になってしまった。

不動産賃貸経営という仕事は新しい物件を購入したり、物件に何かトラブル、水道菅の不具合や雨漏り、エアコンの故障、家賃の滞納などが無ければごく暇な仕事だ。


考えたら小説を書くのにこれほど恵まれた環境は無い。


それに主人公の吉岡彩斗も宝くじを当てて不動産賃貸の仕事をしている仕事の描写に好都合だ。

宝くじで高額当選をした事でそんな馬鹿な!と怒る人も出てくるかも知れないけれど、とみき自体が過去に1000万円以上の高額当選をしているのであまり気にならなかった。


今現在長編小説を執筆している人にはあまり参考にならないだろう(-_-;)


ともかくも最初の1週間は1日も休まずに書き続ける事が出来た。

そして、吸血鬼のマイケル・四郎衛門、主人公の吉岡彩斗、生贄の処女の乙女に、とみき自身が強い関心を持ち続けていた。


ただ、押しつけがましくないように小出しに説明を積み重ねたが、どうも展開が遅い。

駄目な話にありがちな、最初にお話しの設定などをべらべらと長く書く事は避けた。

ゲームじゃなくて小説なんだから。

最初の長い設定にうんざりする層はかなりいると思う。

とみきは老人なので、尚更もう嫌になってしまう。

色々な設定は小出しに小出しに、まずは登場人物に感情移入してもらう作業が先決だ。

最初は主人公たちに感情移入してもらうエピソードを劇的に書く。

主人公たちに関心を持ってもらう。

細かい設定なんかはその後だ。

まずは『つかみ』が肝心。

しかし、展開が少し遅いが薄っぺらい話にしたくなかったのでこれはしょうがないかな?と思った。

或いはもっと文才がある人ならばスマートに説明設定を書けるのだろうな(-_-;)


ともかく、マイケル・四郎衛門が何故吸血鬼となったのかの説明は終わり、彩斗達は食事をとる事になった。




続く



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