箱入り娘のミミックちゃん! ~出会いを求め、旅立てモンスター乙女~

初美陽一

なんと、宝箱はミミックだった!

 その超高難度ダンジョンには、危険度S級モンスター。



 ――ミミック・クイーンが潜んでいた――



 魔法を吸収する超硬度の箱、即死魔法を初手から放ち、二回行動は当然。


 順路を外れた道に無造作に置かれ、そのくせ迷宮のボスより強い〝初見殺し〟は。


「暇ですわ~……」


 超高難度ゆえ冒険者も訪れず、独身で歳は三十ンーッゲッホゲホ。


 第一〝出会い〟に〝エンカウント〟とルビを振られるタイプ、恋愛など夢のまた夢。S級モンスターひっそりと絶滅の危機。


 が、彼女が潜む宝箱に――希少種レアモンスターより珍しい冒険者が足音もなく迫る。


 彼女ミミックは待つ、己自身を罠と化し――獲物が宝箱を開いた瞬間!


「オーホホホ! 迷宮最恐ミミック・クイーンの私に敵はナシ! 私好みの気弱な低身長ショタがソロで現れない限りィィィ!」


「ふええ怖いよう! 遭遇エンカウント回避スキル優先の単独ソロシーフが勝てるわけないよう!」


「ドッキーーーン!!」


 的確に刺さった――シーフでなくスナイパーでは?


 さて腰を抜かす彼に、彼女クイーンは。


「やるわね、でも本番は……箱の中で勝負よ! さあ、さあさあさあ♡」


「えっ何で引き込んで、ちょ……ひぇあぁーっ!?」


 迷宮の外れ道で、少年ショタの嬌声が響いた――



 ――十数年後。


「で、生まれたのがの……

 よ♡」


「あ~道理であーし、箱に入ってるワケだ。てかママ超肉食系~」


「危険度S級だし♪」


理解わかりみ~」


 軽めに返事する娘に、母は語る。


「ということで貴女も狩り……もとい出会いを求め、旅立つのよ。己を罠と化す待ち戦法も、自ら盗みに行くのも……私達のスキルを継ぐ貴女なら、何とでも出来るわ」


「娘に言う台詞じゃなさげ~。満更でもないケド」


「満更でもないんだ。さすが我が娘……さあ行きなさい! 私を討伐した(ってコトにしてる)パパの功績で富豪だし、二重の意味で箱入り娘らしくお小遣い持ってっちゃえ~♪」


了解リョ~。とりま冒険者登録してく~♡」



 箱入り娘のミミックちゃんの冒険は――数多の武勇伝にて語り継がれたとか。

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箱入り娘のミミックちゃん! ~出会いを求め、旅立てモンスター乙女~ 初美陽一 @hatsumi_youichi

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