箱の中の懲りない面々(KAC20243作品)

さんが(三可)

箱の中の懲りない面々

 どの世界にも格差はある。それは箱の世界も同じ。


「おい、箱ティッシュ。パン買ってこいや!」


「やだよ、重箱君。何で、ボクが君の為に買ってこなきゃならなんだよ」


 外は大雨。紙製の箱ティッシュが嫌がる事を知っていて、わざと重箱は嫌がらせをしている。


「イイじゃんか。お前なんて、中身が無くなったら、潰されて捨てられるだけの弱者じゃんか」


 そう言うと重箱は、箱ティッシュの脇腹を小突く。それだけで、残り少なくなった箱ティッシュの体には大きな凹みが出来てしまう。


「止めてくれよ。それにボクには、ボックスティッシュってスタイリッシュな名前があるんだ。君みたいに、古風な名前じゃないんだ」


「ちょっと待ってくれよ、箱ティッシュ君。それは私に対しての挑戦状かい?」


 そこに現れたのは、玉手箱。


「うっ、そんなつもりじゃないけど。でも、時代は変わったんだ。今の流行りじゃないよ」


「流行りなんて関係ないさ。箱の評価を高めているのは私だよ。箱ティッシュなんて、廉価品の代表じゃないか!」


「でも玉手箱君は、開けたらダメな禁忌の箱じゃないか。価値なんて付かないよ」


「そうだ、そうだ。良く言った、箱ティッシュ」


 そこに颯爽と現れたのは、寄木細工の秘密箱。


「この中で一番価値のあるのは、間違いなくあたしだね。箱界の中でも通り名があるのは、あたしだけよ。それに、あたしゃ箱根の箱よ」


「それは無茶だよ、秘密箱君。それなら、箱根の箱ティッシュだってあるじゃないか」


「でも、あんたは違うじゃないか」


 そんな争いを、近くで眺めていた箱がいる。


「また、やってるでごわすか。資産価値なら、おいどんが断トツ。それに名前だってスタイリッシュでごわす」


「スーパーアリーナ君は、君は箱じゃないだろ」


「いや、おいどんは箱もの。でかくなければ、箱じゃないでごんす」


「ちょっと、待ちな。それは聞き捨てならないね!」


 そこに見栄を切りながら現れたのは、十八番。


「お前らには、伝統がない。俺様は、無形文化遺産よ!」


「でも、箱の名前を捨てた裏切り者じゃないか。そんな君には箱を名乗って欲しくないね」


 箱ティッシュの反論には、他の箱達も賛同し、さらに騒ぎは大きくなる。


「うるせーぞ、テメーら。ぶち込んで、臭い飯食わしたろかっ」


 最後に出てきたのはブタ箱。その迫力に、反論出来る箱は誰もいない。次々とブタ箱に叩きこまれて、今日の論争は終わりを迎える。


 今の箱界の頂点には、圧倒的な力を持ったブタ箱が君臨している。


 頑張れ、負けるな、箱ティッシュ君。中身はもう少しだが、箱ティッシュ君のあくなき挑戦は続く。

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