この箱にカギが入っています。
作者不明(ゴーストライター)
ここから、出して
〔この箱にカギが入っています。〕
白い文字で書かれている黒く四角い箱を僕は持っていた。僕は全裸にされており、服も財布も、リュックもない。
周りは白い空間に囲まれている。確認できるものは目の前の
どうやら何者かに拉致されて閉じ込められているらしい。今日は誕生日だというのに悪い冗談だ。脱出ゲームにしては悪質すぎる。一体誰の悪戯だ。
僕は何とかしてココを脱出しようと箱を開けようと試みる。こんな悪質なドッキリを仕掛けた主催者に文句を言ってやるのだ。いや、通報して警察に突き出した方がいいだろうか。最近は迷惑系のユーチューバーなるものがいるそうだが、これもその迷惑行為の一つに違いない。
ボクは箱を入念に調べた。
一見するとただの黒い箱にしか見えない。しかし、よく見ると箱に切れ目のような線が見える。線は箱を一周して繋がっている。箱の上部と下部が切り分けられているようにも見える。おそらく何かアクションをかけると二つに割れるのかもしれない。
引っ張ってみるが当然分かれない。叩いてみるが材質が金属であるため、自分の手の方が傷ついてしまう。手の平が真っ赤になってジリジリ熱い。
僕は自分の頭で考えられる、あらゆる方法で箱を開けようとした。どれくらいの時間がたっただろうか。空腹でお腹が鳴り始めたから、おそらく拉致されていなければ夕飯を食べていた頃だろう。両親は心配しているはずだ。僕はおそらく覗いているであろう悪趣味な連中に向かって叫んだ。
「もういいだろう! ここから出してくれ!」
返事はない。
「このままだと両親が心配する! 僕の負けだ!」
返事はない。
「いい加減にしろよッ!! 出せって言ってんだろうがッッッ!!」
さすがにイライラして、僕は力いっぱい扉を蹴飛ばした。しかし足の方が痛くなるだけだった。
「クソっ!」
僕はイライラが頂点に達し、黒い箱を力いっぱい壁に投げつけた。黒い箱はクルクルと回りながら壁に激突した。そして床に落ちた。その時だった。
カチャッ!
「!」
投げた箱から機械仕掛けの音が聞こえた。やった、開いた。喜び勇んで僕は箱を開けた。
「……何も、ない」
箱の中には何も入っていなかった。二重底の可能性もあると考えて重箱の隅をつつくように入念に調べた。ない。ない。何もない。
「──実験成功だ。やはりこの生物には知能がある」
その時、真上から視線を感じて、恐る恐る、僕は天井を見上げた。
「!」
巨大な顔の僕が……箱の中の僕を覗き込んでいた──。
この箱にカギが入っています。 作者不明(ゴーストライター) @yoshi_hiroki
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