社会という名の箱庭

月乃兎姫

第1話

 実生活の中で【箱】という言葉を耳にすることがある。しかし、社会というものも、ある種の【箱庭】と言えなくもない。それというのも、法律や社会生活を誰しもが強制的にも強いられているからだ。それは誰かから与えられたものではなく、社会という仕組みからして、そのようになっている。


 学生という名の箱庭、会社や仕事などの箱庭、果てはスーパーやコンビニなども箱庭と言い換えることができる。今の社会は一歩外に足を踏み出せば、否応なくまた自らの意思に反した場合でも、決まり事や法律などに縛られることになる。


 学業を終えた後、就職や起業、あるいは結婚生活など何かしら社会的立場を与えられ、それと同時に何かしらの成果を求められることになる。特に仕事においては、それまで培った机上の空論や知識など、端から役立つことは少ないと言える。


 むしろ余計な知識をおもんばり、『本当に今の仕事は自分の能力や学歴に見合っているのだろうか?』などとの疑問が生じ、せっかく就職できても転職あるいは離職することが多いそうだ。これは高学歴、それも誰もが知る有名大学を出た人が陥る足枷のようなもの。学歴が重ければ重いほど、その足枷も重くなり、いつしか歩むことを止めてしまう。その先にあるのは、明るい未来でないことは言うまでもない。


 時に事件を、時に人を、時に社会を、一歩でもその外へと足を向ければ、忽ちのうちに壊されることになる。それは社会や他人はもちろんのこと、自らもその犠牲の一端となり得てしまうものなのだ。


 社会における【箱庭】とは、そうした一定の条件の人たちを一か所に集めたものの総称である。それと同時に自分達が着飾り、それらを見て楽しんでるつもりだろうが、実は自らもその一部でしかないことに、果たして気づけるのだろうか?


 それとも知り得てなお、一部を演じ続けることで現実から目を背けているのだろうか? それが社会構造の根幹であり、決して抗えぬものかもしれない。

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