箱庭へようこそ

月井 忠

一話完結

 ミホちゃん何作ってるの?


 セカイだよ。


 えっ……そ、それはすごいねえ。


 うん。


 この箱がセカイなの?


 うん。


 じゃあ、このお人形は?


 パパ。


 じゃあ、この女の人がお母さんかな。


 ううん、知らない女の人。


 えっ! そ、そう。じゃあお母さんは?


 いないよ。出てった。


 そ、そうなんだ。でもミホちゃんのお家にはお母さんいるでしょ?


 うん。いるよ。


 じゃあ、なんでこの中にはお母さんがいないの?


 だって、これはセカイだから。


 世界だと、お母さんはいなくなるの?


 うん。テレビでやってた。


 テレビ?


 うん。男の人はみんなお家の外に女の人が待ってるんだって。


 ワイドショー死すべし!


 ワイ……なに?


 ううん、こっちの話。それで、この世界は平和なのかな?


 フツウ。


 うっ、そっか。


 そう。だって、フツウが一番ってママも言ってた。


 そうね。平和って普通っことだもんね。


 えっ? そうなの?


 そうよ。何事もないのが一番!


 そっか、じゃあセカイもヘイワだね。


 ええ、そうよ。


 じゃあ、コレはセカイじゃないね。


 えっ? どういうこと?


 だってセカイはヘイワじゃないもの。


 うっ……でも、それは違うかもね。


 そうなの?


 もちろん、この世界は色んなものがまじり合っているの。


 まじる……ってどういうこと?


 そうだね。例えば、この箱には男の人も女の人もいるでしょ?


 うん。


 男の人は不幸だと思っていても、女の人はそうじゃないかもしれない。だから世界全体だと平和でもあるし、平和じゃないってこともあるの。


 へええ、そうなんだ。面白い。


 そうだね、面白いね。


 じゃあ、わたしセカイを作ったんだ?


 そうかもね。


 じゃあ、このセカイは誰が作ったの?


 え?


 わたしがいる、このセカイは誰が作ったの?


 誰って……。


 だって、誰かが作らないとセカイはないんでしょ?


 う~ん。本当はもっと難しい話なんだけど、今は神様って言えば良いのかな?


 じゃあ、カミサマって私よりバカなんだね。


 え? ちょっ、ミホちゃん?


 だって、私の方がもっと上手くセカイを作れるもん。

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