【KAC/甘くないお仕事SS3】ビックリ箱は恋の始まり?

滝野れお

ビックリ箱は恋の始まり?

 ルース王国の王宮に勤務する結婚予定の恋人たち。

 彼らの新居内見について行ったキアたち侍女三人に、新郎の友人である青年三人が加わって、突然始まったお祝い会。 

 キアにとっては無理やり連れて来られたのお祝い会ではあるが、幸せそうなカップルに対するお祝いの気持ちはもちろんある。


 三人で買ったテーブルクロスや生地リネンの詰め合わせをプレゼントすれば、花嫁は頬を染めて喜んでくれた。


 三人の青年たちも二人にお祝いの品を渡していたが、何故かキアたちの前に三つの箱を並べた。


「きみたちも好きな箱を取って」


「えっ、良いんですか?」

「わぁ何だろう?」


 侍女仲間二人が嬉しそうに箱に手を伸ばす。

 キアもお礼を言って残りの一つを手に取った。


 二人の箱には可愛らしい髪飾りが入っていた。

 喜ぶ二人を横目で見ながら、キアは申し訳ない気持ちになった。青年達には何も用意していなかったのに、自分たちだけ贈り物をもらって良いものだろうか。



「キアも開けてみなさいよ」

「え、うん」


 言われるまま、キアは箱に手をかけた。


 みょーん!


 ふたを開けた途端、とぐろを巻いた何かが飛び出した。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!」  


 スプリングのついた蛇のおもちゃに悲鳴を上げるキア。

 その途端、茶色い髪の青年がゲラゲラと笑い出し、お祝い会は微妙な空気に包まれたのだった。



〇〇



「よう、キア! 元気か?」


 翌日。キアが王宮の使用人食堂で昼食を食べていると、ニヤニヤしながら茶色い髪の青年が近づいてきた。


「あ……ビックリ箱の人」

「ラウルだ」


 苦笑しながら、彼はキアの前に腰を下ろした。


「昨日は悪かったな。謝ろうと思ってたら、おまえ先に帰っちまうんだもん」

「別に、謝らなくてもいいですよ。贈り物が欲しかった訳じゃないから」

「あ~だよな。おまえも無理やり連れて来られたクチだろ? 俺もそうだったんだ」


 ラウルはニカッと歯を見せて笑う。

 キアもつられてクスクスと笑った。


「あの箱を開けたの、あたしで良かったですね」


 昨日のお祝い会(という名の合コン)で、キアの侍女仲間二人は、プレゼントの贈り主の青年たちと良い雰囲気になっていた。


「あたし、まだこの仕事始めたばかりだから、誰かとお付き合いするとか考えられなくて……」


「俺もそう思ってたんだけどさ……もし良かったら、今度の休みに、一緒に出掛けないか?」


「え?」


 人生何が起こるかわからない。

 瓢箪から駒。

 ビックリ箱からヘビ。

 キアに人生初のデートの誘い。


 どうする、キア?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【KAC/甘くないお仕事SS3】ビックリ箱は恋の始まり? 滝野れお @reo-takino

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ