今週も後輩が隣に居る。

くすのきさくら

2人だけ。

 これは俺と後輩のとある日の日常である。


『まもなく。3番乗り場に。当駅止まりの――』


 聞きなれた機械音声のアナウンス。

 この場所は大きなターミナル駅。

 どんつきと言えばいいのだろうか?

 この先線路はありませんというか。まあとにかくここは終点の駅すぐに線路は終わりを迎える。

 なお、そんなところで、というべきか。とにかく今俺が何をしているかと言えば――。


「先輩。私も参加させてください」

「えらく唐突だな」

『まもなくー。1番乗り場から電車が――』


 すると、急に俺の隣に顔を覗かせてくる輩が――って、俺と一緒に行動している奴と言えば1人しかいないので、とっとと簡単に説明しておこう。

 こいつは同じ部活の後輩だ。

 ちなみに女。

 ちょっと最近二の腕にお肉が――とかほざっている奴でもある(余計な情報流してやったぜ。心の中で――)。俺から見ると今まで通りというか。入学してきたときとさほど変わらない気がするが――まあいいか。とにかく俺の隣でセミロングの黒髪が揺れて、後輩が俺のを見ている。

 俺は美術部に入っているのだが。ふとしたことで、俺の秘密――というと大げさだが。でもまあ個人的な楽しみを知られてしまった――というかもとはと言えばこいつが人のスマホを勝手に見たのが悪いのだが――そうだよな。普通部活動中に人の荷物漁っている後輩がやばいよな。まあ机の上にあったのを見たらしいが――ってか、暗証番号。スマホのロック画面を知っている後輩とか――めっちゃ怖いんだが。そのことに関しては上手に逃げられて今に至る。こいつ――人のことを良く見ているようだ。というか、なんで俺の事ばかり見ているのかすごく気になるが――まあいいか。

  

「なんか面白そうじゃないですか。私も入ります」

「いや、入らなくていいし」

『――お乗り換えの方はホーム中央の――』

「いいじゃないですか。こんなにたくさんいろいろな人が居るじゃないですか。私も混ざりたいです。こういうのって自分も混ざるべきですよ」

「なんで後輩を混ぜないといけないのか――。というか。普通にに遊びに来るお前は暇なのか?先週も居たよな?その前も」

「先輩が面白そうなことをしているからです。のけ者にするなら学校で先輩のことをばらしましょう」

「どんな脅しだよ」

『次に4番乗り場から発車――』

「こんな脅しです。かわいい後輩が遊びに来ていて。そして混ぜてほしいと言っているのに混ぜてくれない先輩がいけないんです。学校だと――まあ他の目もありますからね。こういう時しか言えませんし。って、せっかく遊びに来ている後輩を適当に扱うな。です」

「――ちなみにだが。俺は数十分前にお前が来ることを知ったというか。突撃訪問されたんだが?そりゃ適当な扱いになると思うんだが?」

「そうでした?」

「そうだよ」

『黄色い線の内側に――』


 カチッ。

 後輩と話しつつ俺が手元を動かしていると。に流れていた音声が止められた。


「ちょ、なんで止めるかな。雰囲気出ないだろ?」


 俺は後輩が手に取ったスマホを回収する。


「なんか先輩と駅のホームに居る感じになっていましたが。って、先輩こんなのどこで見つけてくるんですか」

「えっ?学校帰りにちょっと録音しただけだが?」

「先輩が盗撮してる!」

「いや盗撮はしてないし」

「盗聴してる!そうだ、私を作ってくれないなら先輩が盗撮してニヤニヤしていたこともばらします」

「何が『そうだ』なんだよ。っか、単に個人的に利用するだけでな」

「先輩が盗撮ー盗聴ーあっ、私もかわいいから盗撮されたり?訴えますよ?」

「あー、いつもながら妨害大好きなうるさい後輩」

「です!」

「……もう。じゃあ自分で作れ。隣で作れ。自由に使っていいから。ちょっと静かにしててくれ」


 このまま適当に相手しているといろいろ面倒と思った俺は少しだけ横に移動し。隣にスペースを作った。


「えー、先輩に作ってほしいです。かわいくなかったら作り直しで」

「……」


 この後輩いろいろ注文がうるさい――って、今俺が何をしているかというと。模型作り。箱庭とでもいうのだろうか?長方形のそこそこの大きさのところに鉄道模型のジオラマを作っているのである。

  部活動に関係――あるようなないような。まあこっちは趣味だな。そのうちコンテストとかあったら出してもいいとは思って居るが――。

 とかとか俺が思っていると後輩は今俺の横に座り。まだまっさら。何も色塗りなどをしていない小さな小さな模型の人を手に取った。


「のっぺらぼうーってか、こんな小さいところに顔作る先輩おかしいですよ」


 そしてなんかいろいろ言っている――って、俺は休みの日に何故後輩の子守などしているのだろうか?ホント気が付いたら住み着かれたというか。懐かれて?居るのかは知らんが。なんかよく居る。


 と、とにかく、俺は今にて、模型を作っている。ちなみに今回のタイトルはターミナル駅である。扇形の変わった駅舎を作っているところである。

 そのため雰囲気作りというべきか。その場。駅に居る感じで音楽を流したりしつつ。いろいろな細かなものを作ったり。人を配置したりしているのでる。

 そしたらだ。学校で俺の楽しみを知り(というか人のスマホを勝手に見る方も盗撮とかと同レベルでアウトじゃね?まあ俺はなんも言わないが。言ったら言ったでまた騒ぎそうだし)。ちょくちょく遊びに来るようになった後輩がその模型の中に自分の分身とでもいうのか。人?自分を作って置けと今隣で言っているのである。


「先輩。どうせなら私魔法使いになりたいです」

「マジで注文多いというか。なんでこの今作っている雰囲気で魔法使いが出てくるかね。」

「いいじゃないですか。何でもありって言うのも非現実みたいでいいじゃないですか」


 これは俺と後輩が2人でチマチマ作業をしつつ。 

 いつものように無駄話をしている日常である。

 ただそれだけ。

 ちなみに2人で出かけたことはまだない。


「――ところで先輩。こういうのって。現地調査。実際にこういう駅に行った方がいろいろイメージ膨らむんじゃないですか?」


 ――あれ?なんか起こりそう?いやいや――。

 後輩が何か言い出したが――今はまだ俺は隣でなんか騒いでいる後輩をスルーしつつ。作業を進めるのだった。

 後輩と何かが始まる。それはまた別の話――。





 了

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今週も後輩が隣に居る。 くすのきさくら @yu24meteora

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