第58話 レトファリックの授業、持たざる者へ
国王ゼレラは演習を生徒たちに始めさせた。
「それじゃ今から演習時間だ。みんなは選ばれた優秀な生徒だからできると思う。火魔法をやってみよ。」
生徒たちは手の平に火の玉を出す事に成功したものはいたが、ファイアバードやファイアゴートを生み出せるものは極わずかだった。
「くそ、なんでゼレラ様のように火魔法が使えないんだ。」
「俺はファイアバードはできたぞ。よし、やっぱり才能あるな俺。」
生徒の中で差が生まれていたことに舞台裏にいたレトファリックも気づいた。
「チャンスだ。」
国王ゼレラは自分の流儀を生徒たちに話始めた。
「私は君たちが優秀な生徒たちだと思って話をする。君たちの事を選ばれた私の優秀な生徒として対等に接する。だから私の授業には死にものぐるいでついてきてほしい。私の教え方で分からなかった生徒はいないと私は思っている。ついてこれるように私もできる限りの事をしよう。私と明日も美しき魔法について語り合おうではないか。」
国王ゼレラの言葉に皆が声援を送った。
「かっこいいです国王様。」「あなたについていきますゼレラ様。」
国王ゼレラは次に氷魔法についての授業を始めた。
「実習は最後に一気に行おう。次に氷魔法について教える。氷魔法は外側が角ばっているから、牛や鳥を生み出すのは難しい。コツは彫刻を掘るように氷と氷をぶつけて滑らかにしていく。すると、こんな風に氷の小鳥が生まれる。」
国王ゼレラは氷と氷をぶつけて堀り進めて手の平から人の頭程度の小鳥を生み出した。
「氷魔法を使った様々な手法も見せておこう。氷のハリセンボン、これはハリセンボンのように氷が針になっており、敵に向かって針が飛び攻撃を加える代物だ。それと、氷の雨これは上空に氷の粒を向かわせ敵の上空から攻撃を与える。あとは氷の地面にすることで敵の足を封じ敵の動きを止める技もある。」
国王ゼレラは水魔法について教え始めた。
「水魔法は、魔力が多ければ大きいほど強くなる。津波のような圧倒的な質量攻撃が特に強い相手が泳げなければなおさら脅威になる。試しにみせてみよう。」
国王ゼレラは目の前に大きな水の玉を生み出した。手で魔力を加え続け、水の玉はどんどん巨大になっていった。
「来波。」
大きな水を舞台裏に向かって放出した。一列目の生徒は少し水びたしになった。
「では今度は雷魔法を君たちに見せよう。」
国王ゼレラの手に雷魔法を出し周囲に見せた。
「雷魔法はスピードが命。早く放てれば早く放つ。詠唱も限りなくすくなくした方がいい。雷魔法で重要なのは、雷を自分自身にまとう電人という技だ。これは雷を自身にまとうことで相手からの攻撃より素早く動かし敵に雷を直接手でぶつける。あとは電気の網。これは雷魔法を使って網目状にして敵を捕縛して電気が加えられることで敵の抵抗力を弱らせ封じる技。このように雷魔法は実用的な使用法がいくつかある。」
国王ゼレラは生徒たちに草魔法を見せた。
「最後に草魔法について授業をしよう。草魔法には主に植物系魔法と、花魔法、グラス空間魔法の3種類ある。それぞれの解説をしよう。」
国王ゼレラは手から植物のつるを生み出した。
「まずは植物系魔法、これは植物を手から生成して相手を捕縛したり移動するときに用いる。上手く植物を使うと足場と気球のようなものも生み出せるようになる。優秀な君たちならいずれできるだろう。」
国王ゼレラは目の前にラフレシアを生み出した。
「次に花魔法を見せよう。これは花魔法の一つラフレシア、においで相手に害を及ぼす。くさいな。一旦別の花を見せる事にしよう。」
そういうと国王ゼレラは食虫植物を生み出した。
「これはカラスバナ。花の先が鳥の頭のような見た目をしている食虫植物の花。これを用いて敵を捕食させ身動きを封じる。花魔法はこのように花や植物を生み出し敵を攻撃、威嚇し追い詰める。」
国王ゼレラはグラス空間魔法を見せた。
「最後はこのグラス空間魔法。グラス空間を生み出し植物の生長を促進させる効果を持ってる。他には花の生長を促進する魔法もある。魔法を駆使して植物で相手を足止めしたり植物の棘を利用して相手を攻撃したりする。」
国王ゼレラは授業が終盤になっていることを把握した。
「では最後の演習はじめ。みんなも技も真似してやってみよう。」
生徒たちは、火の矢や、氷のハリネズミを生み出したりしていた。
しかし、授業についていけず魔法も生み出せないものもいた。
「ゼレラ様、植物魔法に挑戦しているのですが、全くできなくて。」
国王ゼレラは最前列にいた彼に声をかけられ反応した。
「なるほど、魔力が足らないのかもしれない。魔法を放つときにもっと想いを込めるんだ。」
国王ゼレラからアドバイスをもらった生徒は嬉しそうに植物魔法の練習をした。
しかし、手から出てきたのは少しのつるだけだった。
「ゼレラ様植物魔法、できません。」
「ほかの魔法を試すといい。自分に合った魔法がある。私のように複数の魔法を扱えるのは特別な部分も多い。」
国王ゼレラから言葉を頂いた生徒は他の魔法も試した。
「水魔法と氷魔法が少し得意です。それでも多量攻撃はできないですが。」
国王ゼレラは生徒の言葉を聞いて少しあきれたような口調で述べた。
「水魔法と氷魔法ができるなら努力したまえ。魔法が使えないのはこの国においては恥るべき行為だ。気を付けた方がいい。」
演習が終わり国王ゼレラは再び壇上に上がった。
「今回の私の授業はこれで終わりとする。先ほど、水魔法と氷魔法のみ使える生徒と話をしたのだが、自分に合う魔法は必ずある。自分の個性を伸ばすように魔法を伸ばそう。選ばれし生徒たちよ、魔法の叡智を高めて努力していこうではないか。」
国王ゼレラの授業の終了を拍手で声援を送った。
「国王様、さすがです。かっこいいです。」
「素晴らしい授業をありがとうございます。国王ゼレラ様。」
舞台裏でゼレラは、レトファリックと挨拶した。
「君の事は気に入っている。面白い授業を頼むよ。」
国王としての威厳のある素晴らしい授業を見せられ、レトファリックは動揺していた。
「負けたらまずいので頑張ります。僕は生徒たちにとって有益な授業をします。」
国王ゼレラは彼の頭を触った。
「期待しているよ。」
司会の方がレトファリックを呼んだ。
「それでは次にレトファリック様の授業を受けていただきます。レトファリック様、お願いします。」
レトファリックは壇上に姿を現した。
「負けたら死ぬ。負けたらまずい。負けたらまずい。」
レトファリックは緊張のあまり、手に人の字を書いて飲んでいた。
壇上に姿を現すと、司会の方からマイクを渡された。
「え。え。あ、あ。」
キーとマイクの音が鳴った。
「は、はい。僕は大丈夫です。皆さん落ち着いてください。」
周りの生徒たちからは笑い声が生まれていた。
「いや、お前が落ち着けよ。レトファリックさん。」
「あんたが新しく教師になるレトファリックさんか、僕は大丈夫ですって面白いな。あはは。」
周りから笑われたことでレトファリックは落ち着いた。
「持たざる生徒たちへ。僕の授業は魔法が上手くできない。そもそも魔力が足りない。連想ができず魔法を制御できないという者たちに捧げる。まずは僕の能力をみせていこう。」
NON PLAYER CROWN ~デスゲームに巻き込まれたNPC人魚が擬態スキルで行脚する~ 貝袖 萵むら @yumakureo
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