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「おーい。なにやってんだよー。チアサー。そんなところでメイヤなんかとつっ立ってたら、おまえまで学校遅刻しちまうぞー」
ゴウが叫んだ。
「あっ、いけない」
ミヅカさんはあわてて言った。
「じゃあ、がんばってね。遅刻しちゃだめだよ、メイヤくん」
ぼくの肩をぽんと叩くと、ゴウのもとに走っていく。とうぜん、荷物持ちは手伝ってくれない。
やっぱり、あの子は天然だ。
「えー、そんなあ……」
ぼくはぽつんとひとり路上に残された。地面にしっかり足をつけたレッドウイングのエンジニアブーツがずしりと重い。
視線をあげて、住宅街の上に広がる空を眺めた。
あーあ。むかつくくらいに、青い空。むかつくくらいに、いい天気。
道の先では、ゴウとスナオとミヅカさん。三人組は、うしろを振り返り、なにやってんだこののろまって目つきでこっちを見ている。
せっかくぼくが命を張ってがんばったっていうのに、誰もわかってなんかくれない。
でも。
「まあ、いいか」
ぼくが「おれ」で本当はのろまなんかじゃなく、正義のヒーローだって、誰もわかってくれなくても。
「待ってよー、みんなー」
ぼくはいつもより軽い荷物を両手にかかえて、道の先の三人に向かって走り出した。
顔には不満や、得意げな表情も乗っていないと思う。
だって不満を言っても、自分の手柄を言いふらしても、なんの意味もないだろう?
だから……
そうそう……
あんた、おれのことを知ってるかい?
おれはぼくで、ぼくはおれで、夢のなかではヒーローで、触手の悪魔からこの街のみんなを守るバクマンだっていうことは、ぼくと、あんただけの秘密だ。
END
バクマン 成星一 @naruseni
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