訳あり物件シミ付き、でも足はつかない職場です

ののあ@各書店で書籍発売中

レクチャー


「訳あり物件で先輩のレクチャーかぁ」


 不動産のド新人たる俺は、一見普通の一軒家へ向かった。


「こんにちは、新人の安田です」

「おぅ、新しくきた奴か。入りな。」


 出迎えてくれたのはラフな半袖のイカツイ男性。

 ぱっと見「ヤ」の字にしか見えない。


 チラリ


 なんか……肩や首後ろから鮮やかなのがハミダシテナイ?


(やっぱその筋の人じゃねえか!?)


「どうかしたか?」

「何でもないっス!」


 振り向きざまのニッコリ笑顔。

 やばい消される!?


「聞きたい事はなんでも聞けよ」


 っっぶねぇ! フランクな人で良かったぜ!!

 よし、隙を見て逃げよう。


「まず、このリビングが肝だ。この椅子を動かすと……」


 ガタゴト ゴトガタ


「ほら、こんなに大きなシミ(※人型大で赤い)がある。困ったもんだ」

「ちょっとは隠せやーーー!!?」


 あまりのオープンさに突っ込まざるを得ない。


「これ込みの激安物件なのさ」

「クールか! それとも呑気か!? もっと誤魔化す努力をしてえ!!」


「ハッハッハッ、お前は見所があるなぁ。ついでに教えとくと、ほらココ。よーく見なくても、頭っぽいところにザクロが咲いてるようで御洒落だよな」

「どこが!?」


 なにこの家! ヒットマンにでも狙われたの!!?


「それからこの額縁の裏なんだけど」

「ま、まさか弾痕があるとかじゃ……」


「惜しい。あるのはビッシリの御札でしたー♪」

「だからもっと誤魔化す努力を!!」


 ホラー特集でしか見たことないわこんなん!


「とまぁ、リビングだけでこんな感じなんだけど。どうかな? キミだったら住みたくなるかい?」

「無理です」


「『足がつきにくいおうちです』って触れこみならどうだ?」

「んな『アットホームな職場です♪』みたいに言ってもダメなもんはダメーーーー!」


「実際足はつかないんだよ」


 イカツイ男が自分の足元を指さす。

 俺の目線がそちらへ下がっていくと。


「ね?」


 男の足が無かった。

 浮いてる。お化けみたい。


「そーいう意味じゃねえーー!!?」


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