ネコミミメイドの瞬くん

惣山沙樹

ネコミミメイドの瞬くん

 ほんの見学程度のつもりで行ったのだが、俺はその少年を見た途端、目が釘付けになってしまった。

 女の子みたいに可愛らしい顔立ち。ほっそりとした体つき。頭に生えた白いネコミミと、細長い尻尾。白髪のショートヘアー。

 なりふり構わず入札して、俺は少年の所有権を得た。引き渡しは三日後だった。その間に準備を整えた。


「よろしくお願いします……」


 少年は病院で患者が着せられるような長いシャツを羽織っており、裸足だった。俺は少年を抱きかかえて車の助手席に乗せた。そしてネコミミを撫でながら言った。


「俺は伊織いおり。よろしくな」

「はい、ご主人さま」

「ご主人さまっていうのは……そんなに好きじゃないなぁ。そうだな、兄さんって呼べよ」

「兄さん……」

「そうそう。よくできたな」


 俺の住むマンションまで連れて行き、リビングの椅子に座らせた。


「お前に名前つけないとな。一瞬で気に入ったから……しゅんはどうだ? 瞬間の瞬」

「しゅん……」

「うん、いいと思う。そう呼ぶぞ」


 来たばかりで瞬は怯えている。俺はまず食べ物で釣ることにした。


「カレー、食べれるか? 俺が辛いものダメでさ。甘口だけど」

「食べれる、と思います」


 鍋を温め、米はちょっと少ないかな、くらいの量を盛った。瞬は細いから、どれくらい食べられるのかわからなかったのだ。


「ほい。足りなかったら言え、まだあるから」

「いただきます……」


 瞬はぱくりと一口食べると、目を丸くした。


「美味しい……!」

「そりゃよかった」

「僕、こんなに美味しいの食べたの初めてです!」


 瞬はルーも米もおかわりした。いい食いっぷりだ。最後にゴクゴクと水を飲み、満面の笑顔を見せた。


「兄さんがいい人で良かったです」

「これまでどうしてたんだ?」

「ずっと……一人で閉じ込められていました。売れるようにまで傷物にならない方がいいからって」

「そっか。寂しかったな。これからは俺が相手してやるからな」

「ありがとう、ございます」


 そして、寝室に連れて行き、瞬のために買い揃えた物を取り出した。


「さっ、これ着ような」

「何ですか?」

「ネコミミ用のメイド服だよ。身の回りのことしてもらおうと思ってな」


 瞬を脱がせ、頭から黒いワンピースをすっぽり着せた。尻尾が出るよう後ろのファスナーの位置が調整されており、くれぐれも毛を挟まないよう慎重に扱った。

 スカート丈は膝上。瞬のすらりとした白い脚があらわになった。白いエプロンもつけ、今度は頭。白いフリルのついた、ホワイトブリムというやつだ。瞬はぱあっと顔を輝かせて言った。


「わぁっ……可愛い服……」

「よく似合うよ。これにして正解だったな」


 最後は黒い靴下だ。俺は瞬をベッドに座らせた。靴下のつま先とかかとを合わせ、ゆっくりと上げていった。くるぶし、ふくらはぎ、そして太もも。


「うん……長さも丁度いい。なあ瞬、立って後ろ向いてみろ」

「はい」


 スカートと靴下の間にわずかに見える肌色。ゴムが食い込んだ上が少し盛り上がっていて、そこを舐めるように見た。


「兄さん……」

「ああ、今度はさ、座って脚組んでくれ」


 言われた通りにした瞬は、俺の顔を覗き込んできょとんとした顔をした。


「嬉しい、ですか?」

「うん。たまんない」


 スカートの下には何もはかせていなかった。ギリギリ何も見えない。素足もいいのだが、それをぴったり覆う黒、というのは格別だ。俺はたまらず瞬のふくらはぎに頬をすりつけた。


「兄さんっ、くすぐったいです」

「えへ、えへへ……」


 そして、スンスンと匂いをかいだ。


「くっ……はぁっ……」

「兄さん、大丈夫ですか? 息荒いですよ」

「ヤバい、大丈夫じゃないかもしれない」

「ぼ、僕……どうすれば……」

「そのまま……そのままいて……くはっ……最高っ……」

「えっと……」


 瞬は俺のものになったのだから、何をしてもいいのだが、手荒なことはしたくない。ゆっくりと信頼を育もうと思った。


「そうだ。タバコ、吸ってみるか?」

「タバコ……?」


 俺はピースの箱を取り出し、その中から一本つまんで瞬にくわえさせた。


「息吸って」


 火をつけてやると、瞬はたちまち涙目になった。


「んんっ……」

「まずはフカシでいいよ。浅く吸ってみ?」


 瞬は潤んだ目を俺に向けてきた。


「煙たいです……」

「慣れたら旨いよ」


 それから、瞬に掃除機や洗濯機の使い方を教えた。彼の飲み込みはよく、一週間もすると、家の中のことは全部任せられるようになった。

 どれだけ疲れて帰ってきても、瞬がいる。そのことは、俺の人生に安息をもたらしてくれた。

 寝る時は、メイド服ではなく、白いもこもこのパーカーとショートパンツを履かせた。太ももまで覆う靴下も白。こちらもいい。俺の腕の中におさまって、すぅすぅと寝息をたてる瞬は、この世界で一番大事なものになった。




「兄さん、おかえりなさい」


 一ヶ月もすると、瞬も遠慮がなくなったのか、リビングでタバコをスパスパ吸うようになった。家事さえきちんとできていれば別にいい。


「今夜はね、肉じゃがにしてみたの」

「おおっ、楽しみだなぁ」


 瞬と一緒に食卓を囲んだ。砂糖をたっぷり使ったのだろう、甘い味付けの肉じゃがは俺の疲れを癒やしてくれた。


「なぁ瞬。俺、明日休みなんだ。お前の服買いに行こうか」

「嬉しい! どんなのがいいかなぁ」


 ほくほくの笑顔を見せる瞬。そろそろいいだろう。俺は次の段階に進むことにした。


「瞬、今日から俺の身体洗ってくれよ」

「うん、いいよ!」


 メイド服を脱がせて一緒に風呂場に入った。瞬はいそいそと俺の背中に泡をつけた。


「兄さん、どう?」

「ん……もう少し強くこすってもいいぞ」


 瞬の手が股間に伸びる前に俺は制した。


「そこはお口でやってもらおうか」

「ふぇっ……?」


 戸惑う瞬の口に無理やり詰め込んだ。


「んっ、んんっ」

「よしよし、いい子だ」


 ネコミミがぴくぴくと動き、苦しそうだ。最初だし、少しだけでいいだろう。離してやった。


「かはっ……」

「タバコと一緒で美味しく思うようになれるよ」

「本当……?」


 潤んだ瞳を向けてくる瞬。可愛い。本当に可愛い。


「瞬も洗ってあげような」

「あっ……」


 指の腹を使って丁寧に尽くしてやった。尻尾の付け根は嫌がられた。そこが弱いらしい。


「兄さんっ、僕、おかしくなっちゃうからぁ」

「よしよし、やめておこうな」


 風呂場から出て、髪と尻尾にドライヤーをかけてやった。丹念にブラシをかけると、瞬は目を細めてうっとりとした。


「よーし、もういいか。靴下だけ履いて」

「あっ、うん」


 何度も履かせているうちに、瞬も慣れてきたのか、すうっと太ももまで白い靴下をあげた。俺は瞬の姿をまじまじと見た。


「なんか、裸より恥ずかしい……」


 プラプラと尻尾を動かし、瞬は身をもじもじさせた。


「じゃあ、ちょっとだけやってみるか」

「えっ?」


 ローションを取り出すと、瞬は後ずさりした。


「何、するの……」

「気持ちいいこと」

「ふえっ……」


 夜はこれからが本番だ。

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ネコミミメイドの瞬くん 惣山沙樹 @saki-souyama

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