醤油から始まる異世界転生(だぶんぐる版)【自主企画作品・2】

だぶんぐる

異世界転生しました。

【前書き】

本作は、自主企画『あなたの作品を原作で書かせてもらえませんか?』の応募作。

『灯火』様の『醤油から始まる異世界転生』を原案にだぶんぐる改変で書かせていただいております。

ご提供ありがとうございます。是非、原作もお読みください。

灯火様の物語設定が面白く、原作の二次創作のような形になりました。





***********





ここ、どこだ?


目に見えるのは、少し曇ったガラス。

その先には椅子や机が並んでいて、どうやら店の中のようだ。


「へい、らっしゃい」


うん、お店だわ。間違いなく、店。

店でないのに、らっしゃいなんて言う奴はいない。

ラッシャイという挨拶をする民族がいたらごめん。

もしくはラッシャイさんがいたらごめん。


すると、いきなり僕の入っているガラスを掴む巨人の手!

ガラスを傾けられ、黒い濁流に僕が流されていく。まずいまずい!

ラッシャイさんか!? ラッシャイさんなのか!? ごめんラッシャイさん! やめてくだシャイ!


すると僕の思いが届いたのか途中で巨人ラッシャイさん(仮)は傾けるのをやめ、濁流がおさまる。

ほ。なんとかなった。

しかし、この匂いどこかで嗅いだことがあるような……そうだ! これは……僕の大好きなお寿司様を食べる時に使う……


「いやー、大将のところの醤油は絶品ですからね」


あ、僕、醤油だ。





前代未聞、転生したら醤油だった件。

何故だ、何故醤油?

転生する時のことを思い出してみよう。


『女神様、女神さまのミスで転生ならチート能力はつけてくれるんでしょうね』

『え、ええ……』

『じゃあ、超能力系は全般お願いします。テレパシーとか心を読む能力とかサイコキネシスとか、あと、魔力は勿論無限で、当然美女にモテモテで……なんやかんやうんたらかんたら』

『……わかりました。叶えましょう。ただし! 何に転生するかはこちらで決めます! あなたは! チート分多めのお醤油です! じゃあ、さよなら!』

『ちょま!』


思い出した。注文の多い転生者になったせいか真っ白い女神さまがキレ顔で転生させてた。

だからって、醤油に転生させる!? チート分って、塩分みたいに言いやがって。


しょっぺー人生だな。醤油だけに。ソイソォオオス!


醤油じゃあ何も出来ない。チート分多めだからなんだ。

異世界なのに寿司屋があるって事はもうこの世界は異世界転生が普通の世界なんだ。

転生者もいるなら醤油に転生した僕の活躍の場なんてないだろう。


寿司屋の醤油として生きよう。


僕は諦めて、醤油の人生、じゃない、醤生を死ぬまで全うすることにした。


死ななかった。

そりゃそうだ。こちとら醤油なんだ。醤油が死ぬってなんだ。

衛生管理をそこまでしっかりしてない寿司屋ではしっかり醤油瓶が洗浄されることなくつぎ足し注ぎ足しできれることがない。


そのうちにただ注がれるのも暇なので、チート能力を使ってみることにした。

テレパシーで会話。

何故かこの店に来る客は疲れた人が多く、僕は色んな相談に乗ってあげた。時にはあっさり薄口で時には濃厚濃い口で。醤油だけに。ソイソォオオオオス!


大将が年を取って身体を動かすのが辛くなってきたらテレキネシスで大将の動きをサポートし僕が握った。老いた大将に疲れがたまるくらいなら僕にたまりなさい。醤油だけに。ソイソォオオス!


店に迷惑客が来れば魔法で増量した僕の身体をブシャアし気絶させ、テレキネシスで操り掃除をさせて、テレパシーで改心させ、マメに働くようになる。それが大事(だいず)だべってな。醤油だけに。ソイソォオオス!!!!


そして、注ぎ足し注ぎ足し。僕は醤油として生き続けた。




『へい、らっしゃい』

「あの、ここが伝説の醤油様の寿司屋ですか?」

『伝説かどうかは知らないがたぶんその通りだ』

「あの……醤油様。私は、勇者として転生させられた指原美緒と申します。お願いです! 醤油様! 私と一緒に、自分の私利私欲のために転生者を増やし続ける白の女神を倒す協力をして頂けませんか!?」

『僕は、ここで寿司屋を』

「知ってます! でも、何故こんな辺境で寿司屋を続けているんですか!? 大将も死んで、たった一人で!」


そう。大将は僕を置いて死んだ。いや、大将は人間、僕は醤油。

仕方のない事だ。

エルフと醤油とドワーフは長生きだ。

僕はきじょう(ゅ)に店を一人で守り続けた。醤油だけに。ソイソォオオス!


『だけど、この寿司屋は……』

「醤油様、よく聞いてください。白の女神は遂に貴方を討つことを決めました。貴方に人生を救われた人間たちが女神の洗脳から解放されることを彼女が知ってしまったから」

『そうか』

「行きましょう。醤油様のお力でこの世界に平和を!」

『お前、あだ名あるか?』

「あだな……昔はさしみって呼ばれてました」

『これも運命ってやつかな。分かった、行こう』


僕は、勇者が瓶を掴んだことを確認すると、瓶の口から醤油を噴出させ空へと飛びあがった。


『白の女神か……真っ黒に染め上げてしょっぱい思いをしてもらおう』


醤油だけに。ソイソォオオス!!!




***********


あとがき


原作コメントにもありましたが醤油に転生した時点でもう面白かったのと、空気感が素敵だったので、異世界ファンタジー部分を膨らませて書かせて頂きました。設定がいいと筆がのりますね。楽しかったです。

ありがとうございました。

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